かがくのつまみ食い 2015

サイエンス関連のトピックスを集めてみました。このページは2015年に書いたトピックスです。

 

Date: 2015/12/13
Title: COP21閉幕 ―「パリ協定」を採択
Category: 地球環境
Keywords: COP21、地球温暖化対策、パリ協定


[この記事の内容はサイエンスの話ではなく政治の話ですが、地球温暖化対策のための歴史的合意がなされたことで、あえてここに掲載しました。]

国連気候変動組み条約 (UNFCCC) 第21回締約国会議 (COP21) が閉幕した。開催前から先進国と途上国の間にはあいかわらず意見の隔たりがあり、途上国は「温暖化は工業化を進めた先進国が引き起こした」として、途上国が温室効果ガス排出削減に対して、特にインドが強硬に反対していて、ポスト京都議定書に向けた合意作りは難航を極めるのではと危惧されていた。しかし、会期を一日延長した交渉の末に、ようやく合意に達したようで、先進国だけでなく途上国も含むすべての国が参加する2020年以降の新たな温暖化対策「パリ協定 (Paris Agreement) 」を採択した。

それには、産業革命時 (1750年頃) からの気温上昇を2℃以内に抑えるという目標を掲げ、さらに努力目標としてより厳しい水準である 1.5℃ 以内に抑えることも盛り込まれているようだ。1.5℃ 以内というのは、海面上昇によって水没の危機にある島嶼国が要求していた水準でもある。
また、アメリカや中国、インドも含むすべての国が温室効果ガス削減の自主的な目標を作成して国連に提出し、それに沿って国内の対策を実施する義務を負うことになるのだ。さらに2023年から5年ごとに目標を見直して、世界全体の進捗を検証する仕組みも導入し、削減目標も引き上げていくという。
気温上昇「2℃ 以内」という目標は合意されたが、すでに世界の気温は 1 ℃ 上昇していて、あと 1℃ しか余裕はない。そのためには2050年には温室効果ガスの排出量を2010年比で 40~70% 削減する必要があり、2100年にはほぼゼロかマイナスにする必要があるという。

パリ協定に向けてのもう一つの、そして最大の焦点となっていたのが、途上国への資金援助だ。これを巡っても先進国と途上国の間で対立していたが、これについても、途上国への資金支援を義務づける一方、具体的な拠出額は協定とは切り離す形とし、2025年までに拠出額を最低でも年間1000億ドルとする新たな目標を決めることで決着したようだ。

ひとまずパリ協定が採択されて目標は定められたが、今回の最大の成果はすべての国が参加して合意したことだと思う。
本当に気温の上昇を抑えられるかどうかは、具体的で有効な対策をどれだけ早期に実施できるかどうかにかかっている。温暖化対策は待ったなしなのだ。

関連記事、サイトはこちら。
AFPBB News: http://www.afpbb.com/articles/-/3070080
日経電子版の記事: http://www.nikkei.com/article/DGXLASGG12H37_S5A211C1000000/

Date: 2015/11/27
Title: 温室効果ガスの濃度は2014年に過去最高に
Category: 地球環境
Keywords: WMO、温室効果ガス、濃度


世界気象機関 (WMO) によると、大気中の二酸化炭素(\(\rm CO_2\))、メタン(\(\rm CH_4\))、亜酸化窒素(\(\rm N_2O\))などの温室効果ガスの濃度が2014年に過去最高を記録したという。

大気中の \(\rm CO_2\)(最も重要な温室効果ガスだ)の濃度は 397.7ppm [1] まで上昇していて、産業革命以前 (1750年以前) の水準の 143% にまで増加していて (つまり 43% 増加している。AFPBB Newsの記事では 143% 増加としているが、これは単なる書き間違いか?) 、北半球では、2014年春には \(\rm CO_2\) 濃度が最も高い時で 400ppm のラインを越え、2015年春には地球全体の平均で 400ppm のバリアを超えたようだ。さらに2016年には全地球の年平均で 400ppm を超えると見られているようだ。


大気中の二酸化炭素濃度の推移

大気中のメタン濃度の推移


大気中の亜酸化窒素濃度の推移


また、増えているのは \(\rm CO_2\) だけでなく、メタン(\(\rm CH_4\))、亜酸化窒素(\(\rm N_2O\))の濃度も増加しているのだ。

メタンは \(\rm CO_2\) の次に重要な温室効果ガスだ (メタンは同量の \(\rm CO_2\) の25~50倍の温室効果をもたらすとされている) 。大気中のメタンの濃度は2014年には約 1833ppb [2] に達し、産業革命以前の 254% (154% 増) にも達している。メタンは約 40% は自然界から放出されているが、残りの 60% は工業や農業、畜産業や化石燃料の掘削、ゴミやバイオマスの燃焼などの人間の活動によってもたらされたものだ。

亜酸化窒素は約 60% が自然界から放出されていて、残りの約 40% が人為的に放出されたものとされている。海や土壌、バイオマスの燃焼、化学肥料、そして様々な工業的なプロセスから放出される。大気中の濃度は2014年には 327.1ppb に達していて、これは産業革命以前のレベルの 121% (21% 増) になる。亜酸化窒素はまた、太陽からの有害な紫外線から我々を護っているオゾン層の破壊に対して重要な役割を演じている。

また、報告書は \(\rm CO_2\) と水蒸気との関係にも焦点を当てている。\(\rm CO_2\) とともに水蒸気も温室効果ガスの一つであり (ただし、寿命は短い) 、\(\rm CO_2\) の増加によって大気が温暖化していくと、より多くの水蒸気が大気中に含まれるようになる (気温が高くなると空気の飽和水蒸気量が増える) 。水蒸気量の増加によって、大気の熱エネルギーの増加と温暖化が促進されるとしている。

以上を総合すると、現在の大気中の温室効果ガスの濃度は地球温暖化の危険水準といえるものだ。今、地球温暖化問題の解決に向けて大きな一歩を踏み出さないと、地球は後戻りできない大きな変化に見舞われる。その結果、未来世代にとって地球をより危険で、住みにくい惑星にしてしまうだろうと、専門家らは指摘している。

今月末からパリで国連気候変動枠組条約 (UN Framework Convention on Climate Change: UNFCCC) の第21回締約国会議 (COP21) が開かれる予定だけど、2020年以降の新たな枠組み (ポスト京都議定書) ができるかということがカギとなる。日経電子版の記事によると、この新しい枠組みは『一部の先進国に温暖化ガスの削減義務を課した京都議定書とは違い、途上国も含めた全ての国が参加する温暖化対策の合意を目指す』ものだ。そこで、COP21 で合意を目指すポイントは、「公平性・差異化」「野心的な目標」「発展途上国への支援」の3つに絞られたという。

「公平性・差異化」については、「ポスト京都議定書」には日米欧、中国、インドなどのほぼすべての国が参加することと、先進国と途上国の差をどうつけるかがポイントになるという。途上国はこれまで「温暖化は工業化を進めた先進国が引き起こした」という考えが根強く、先進国と同等の負担を受け入れることを拒んできたので、例えば、先進国には国全体の温室効果ガスの排出削減目標を定めることを求め、途上国には国内総生産 (GDP) 当たりの削減目標を認めるというような、先進国と途上国の削減目標に差をつけるといったことが考えられる。

「野心的な目標」については、ひとつは今後の気温上昇、具体的には産業革命時 (1750年頃) からの気温上昇を 2℃ 以内に抑えるという目標の共有と、5年ごとの目標の見直しについて合意が得られるか、さらに、世界全体が長期目標を定めることがポイントになるという。気温上昇を「2℃ 以内」に抑えるためには、2050年には温室効果ガスの排出量を2010年比で 40~70% 削減する必要があり、2100年にはほぼゼロかマイナスにする必要があるという。これはまさに“野心的”な目標だが、一部には気温上昇 2℃ 以内の達成は困難という分析結果もあるようで、どこまで合意できるかがポイントになりそうだ。

「発展途上国への支援」については、途上国のスタンスは、温室効果ガスの排出削減で経済成長の足を引っ張られたくないので、先進国の技術と資金の提供がないと排出削減はできないというものだ。先進国は 2020 年までに官民合わせて年間 1,000 億ドルの資金援助をすると約束しているが、途上国側は具体的にどのような仕組みで資金を提供するのか、さらに 2020 年以降の支援額についても明示するように求めていて、先進国側は今後の支援の在り方について明示する必要がありそうだ。

と、ここまで書いたところで、新たなニュースが飛び込んできた。
WMO は 2015 年が観測史上最も気温の高い年になる可能性があると警告する報告書を発表したそうだ。詳しい内容はまだ読んでいないので、よくわからないが、今年もやっぱり気温が高かったということだ。日本ではここにきて急に寒くなってきたけれど、温暖化は着実に進行しているのだ。そうすると、気温上昇2度以内という目標の達成はますます困難になるのではと思えてくる。

パリで発生した同時多発テロの影響で開催が危ぶまれていたが、フランス政府は予定通り開催する意向のようだ。アメリカのオバマ大統領も、フランスのオランド大統領とのホワイトハウスでの会談の後の共同記者会見で、COP21 に予定通り出席する考えを示している。たしかに、ここで開催を取りやめてしまえば、テロに屈したとの印象を世界に与えてしまいかねない。新たなテロを警戒しての厳戒態勢の中での開催になるのかもしれないけど、地球の未来のために会議の行方がどうなるか気になるところだ。

関連記事、サイトはこちら。
AFPBB News: http://www.afpbb.com/articles/-/3065998
WMO のプレスリリース:
https://www.wmo.int/media/content/greenhouse-gas-concentrations-hit-yet-another-record
WMO 報告書: http://library.wmo.int/pmb_ged/ghg-bulletin_11_en.pdf
日経電子版の記事: http://www.nikkei.com/article/DGXZZO76056900T20C14A8000036/


[1] 1ppm は100万分の1を表す。この場合、乾燥空気の分子100万個当たりの気体分子 (CO2) の数を表している。
[2] 1ppb は10億分の1を表す。この場合、乾燥空気の分子10億個当たりの気体分子 (CH4, N2O) の数を表している。

Date: 2015/10/22
Title: 再生医療技術を使って加齢黄斑変性の治療法の開発へ
Category: 医学
Keywords: 加齢黄斑変性、再生医療技術


Newsweek を読んでいたら、次の記事が目にとまった。それは、
『「ES細胞を使って高齢者を失明から救え」』
という記事だ。これは、今のところ根本的治療法のない加齢黄斑変性の患者を、再生医療技術が救うかもしれないという内容の記事だ。

黄斑というのは網膜中心部にある黄色をした部位で、そこには光を感知する視細胞のうち色彩を識別する錐体細胞が密集しているのだ。加齢黄斑変性はその名の通り、加齢によって黄斑の錐体細胞がダメージを受け、物がはっきりと見えなくなる病気だ。症状が進むと、物が歪んで見えたり、視力低下、中心暗点 (真中が見えにくくなる) などの症状が現れ、最悪失明に至るという。
欧米では成人の失明原因の第1位で、日本でも高齢化と生活の欧米化によって増加傾向にあり、50歳以上の人の約1%に、高齢になるほど多くみられるそうだ。

加齢黄斑変性は大きく分けると滲出 (しんしゅつ) 型と委縮型の2種類に分けられ、滲出型は網膜の外側の網膜色素上皮 (RPE) や、その外側の脈絡膜 (網膜に養分を供給する血管がある) の機能が低下して、脈絡膜などに異常な血管が発生し、血液成分が漏れ出すなどして黄斑部にダメージを受けて視力低下などをきたすそうだ。他方の委縮型はRPEが徐々に委縮していき、視力が低下していくそうだ。

[注]目の構造については、例えば以下の日本眼科学会のWebサイトを参考にしてください。
http://www.nichigan.or.jp/public/disease/momaku_karei.jsp

記事によると、今回イギリスで始まった画期的な試みは、人の未分化のES細胞 (胚性幹細胞) を使った治療だ。滲出型の患者を対象にした臨床試験がロンドンの眼科病院で始められていて、ドナーのES細胞を使ってRPE細胞を作製し、8月に第1号の移植手術が行なわれたという。RPE細胞移植によって視力の向上または完全に回復することが可能だと研究者らは期待しているようだ。

これはイギリスでの例だけど、日本ではどんな状況なんだろうと気になったので調べてみた。
日本でも理研 (理化学研究所) で、滲出型加齢黄斑変性を対象として、iPS細胞由来のRPE細胞を移植する治療法の開発が進められていて、昨年9月に第1症例目の移植手術が行われ、術後1年を経過した時点では良好と評価できるという。イギリスではES細胞を使った治療法の開発が進められているが、やはり日本ではiPS細胞を使った治療法の開発が進められていた。

ヒトES細胞を使う場合、受精卵を材料として用いるので、いずれヒトになりうる受精卵を破壊することになるため、倫理的な問題が付きまとってしまう (一部には、神経系が発達した以降の胚を生命の萌芽とみなす考え方もあるようだが) 。そのため、国によって研究を認める国と認めない国に対応が分かれているようだ。それに対して、iPS細胞を使う場合は、患者自身の細胞からiPS細胞を作るので、生命の萌芽を破壊するといった倫理的な問題は回避できることから、再生医療の実現に向けての期待は高まっているのだ。

僕もそろそろ加齢によって発症する病気が気になり始める年齢になってしまったけど、加齢黄斑変性による視力の低下に悩む人々にとって、これらの研究は希望の光に違いないし、そうなることを願っている。

関連記事、サイトはこちら。
理研のサイト:
http://www.cdb.riken.jp/jp/04_news/articles/14/140124_ipspre.html
http://www.jst.go.jp/ips-trend/symposium/pdf/no05/poster/ks_h02.pdf
http://www.riken-ibri.jp/AMD/

Date: 2015/09/17
Title: 土星の衛星エンケラドス、星全体に海が広がっていた
Category: 太陽系
Keywords: 土星、衛星、エンケラドス、海


ネットのニュースをチェックしていたら、思いがけないニュースが目に飛び込んできた。
それは、「土星の衛星エンケラドス、星全体が海に覆われている NASA探査機の観測で判明」という記事だ。

Global Ocean on Saturn's Moon ENCELADUS
Credits: NASA/JPL-Caltech
土星の第2衛星「エンケラドス (Enceladus) 」は氷の表面の下の海が星全体を覆っていることが分かったそうだ。NASA (米航空宇宙局) の発表によると、土星探査機「カッシーニ (Cassini) 」が観測した7年以上におよぶデータを解析したところ、エンケラドスはわずかに揺れながら土星の周りをまわっていることが分かった。その揺れの程度は、もし岩石のコアと氷の表面が固く結びついているならば、観測されれたほどの揺れにはならず、それらは星全体に広がった液体の海によって隔てられていると結論付けたという。

これまで、カッシーニによる観測で、エンケラドスの南極付近の氷のひび割れから氷の粒子や水蒸気が噴出しているのが発見されていて、氷の下に液体の水が存在する可能性があることが確認されていた。さらに、その噴出水の中にナノメートルサイズの、シリコンを多く含む微粒子が含まれていて、その分析結果から、熱水活動によるものであることが分かった。

エンケラドスでは以前にも有機物の存在が確認されていたので、これで生命の存在に必要不可欠な三要素とされる、液体の水、有機物、熱エネルギーのすべてが見つかっことになり、地球外生命の存在にも期待が高まっていたのだ。

カッシーニは今後エンケラドスの上空 49 km まで近づいて観測するようなので、さらなる発見があるかもしれない。
楽しみだなぁ。

関連記事はこちら。
NASA:http://www.nasa.gov/press-release/cassini-finds-global-ocean-in-saturns-moon-enceladus
以前、エンケラドスについて書いたブログの記事:http://49576125.at.webry.info/201503/article_3.html

Date: 2015/08/31
Title: 現在は6度目の大量絶滅期か?
Category: 地球環境
Keywords: 地球温暖化、生物、大量絶滅


ネットのニュースをチェックしていたら、次の記事が目にとまった。それは、
『「現在は6度目の大量絶滅期」 英誌に衝撃の論文…環境破壊で「第4次」酷似』
という記事だ。たしかに、現在は実は6度目の大量絶滅の過程にあるという話はどこかで聞いたことがある。

地球では過去5億年程の間に、「ビッグファイブ」と呼ばれる5回の生物大量絶滅が起こっている。
順番に挙げていくと、
1回目は 「オルドビス紀大量絶滅 (オルドビス紀/シルル紀境界) 」 と言われるもので、古生代のオルドビス紀末 (約4億4400万年前) に三葉虫、サンゴ類など、当時生息していた全ての生物種の 85% が絶滅したと言われている。
2回目は 「デボン紀大量絶滅 (フラスニアン期/ファメニアン期境界) 」 と言われるもので、古生代デボン紀後期 (約3億7400万年前) に、板皮類や甲冑魚などの多くの海生生物が絶滅し、生物種の 82% が姿を消したと言われている。
3回目は 「ペルム紀大量絶滅 (古生代/中生代境界) 」 と言われるもので、古生代後期のペルム紀末 (約2億5100万年前) に地球史上最大の大量絶滅がおこった。生物種のおよそ 95% が姿を消したと言われていて、この時代まで生きながらえていた三葉虫もこのときに絶滅したのだ。
4回目は 「三畳紀大量絶滅 (三畳紀/ジュラ紀境界) 」 と言われるもので、中生代の三畳紀末 (約1億9960万年前) に起こり、地球上の生物のおよそ 76% が姿を消したと言われていて、多くの種類のアンモナイトが絶滅し、爬虫類も大型のものを中心に多くが絶滅したといわれている。
そして5回目となる直近の出来事は、「白亜紀大量絶滅 (中生代/新生代境界) 」 と言われるもので、今から6550万年前の白亜紀末期に恐竜が絶滅した出来事で、もっとも有名な生物大量絶滅だ。このとき、全ての生物種のおよそ 70% が死に絶えたと言われている。

記事によると、英リーズ大学のアレキサンダー・ダンヒル教授は、このうち4回目の大量絶滅に注目しているそうだ。原因は火山の噴火が有力視されているのだが、最近の研究によると、噴火した当初は火山に近い場所に生息している生物種が影響を受けたようだが、そのうち地理的な差異は見られなくなり、火山から遠く離れた場所でも影響を受けるようになり、最終的に生物の 80% 近くが絶滅するにいたったのだ。これは噴火によって大量の二酸化炭素(\(\rm CO_2\))などの温室効果ガスが大気中に放出され、温暖化が進行したためだという。温暖化の進行によって、量的に他を圧倒するような優占種であっても、弱小種と同様に環境変化による影響を大きく受けると結論づけているようだ。


大気中の二酸化炭素濃度の推移

年平均気温偏差の推移


これに対して現在の状況は、産業革命以降、工業化の進展に伴い、人類は石炭や石油などの化石燃料を燃やすなどして、大気中に大量の二酸化炭素を放出し続けてきた。そのため、大気中の二酸化炭素の濃度は産業革命以前 (1750年頃) の平均的な値とされる 278ppm に対して、現在では 396ppm まで増加している (左上図) [1] 。実に 42% も増加したことになるのだ。それに伴い、気温も上昇していて、世界の平均気温はこの100年間で約0.7℃ほど上昇している (右上図) [2]

温室効果ガスだけでなく、工場や発電所などから排出される窒素酸化物や亜硫酸ガスなどによる大気汚染、工場排水や生活排水による水質汚染などの環境破壊や、国土開発になどによる過度の森林伐採による自然破壊などもある。過去の大量絶滅期と異なり、これらの環境破壊は人類の活動によって猛スピードで引き起こされていて、多くの生物種に脅威を与えている。それは水と食料を自然界に依存している人類にとっても同様だ。

僕らは今多くの生物の絶滅へのカウントダウンを目撃しているのだろうか? そして僕ら人類自身の絶滅も?
しかし望みもある。環境破壊を作り出している人類自身の行動は改められるということだ。

関連記事はこちら。
AFPBB News:http://www.afpbb.com/articles/-/3057118
ナショナルジオグラフィック:http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/062600161/


[1] 2013年の世界平均濃度。温室効果ガス世界資料センター (World Data Centre for Greenhouse Gases: WDCGG) のデータより。
[2] 気象庁の1891年から2013年までの世界全体の年平均気温偏差のデータから算出。

Date: 2015/08/23
Title: クォーク5個の粒子「ペンタクォーク」発見
Category: 素粒子
Keywords: CERN、LHC、ペンタクォーク、クォークモデル


AFPBB News をチェックしていたら、1ヶ月くらい前の記事だけど、次の記事が目にとまった。
「クォーク5つで構成、粒子『ペンタクォーク』発見 CERN」

スイスのジュネーヴ近郊にある欧州合同原子核研究機構 (CERN) の大型ハドロン衝突型加速器 (LCH) の科学者のチームが、「ペンタクォーク」と呼ばれる粒子の存在を確認したという。
ペンタクォーク (pentaquark) というのは、その名の通り、クォーク5個 (4個のクォークと1個の反クォーク) からなる粒子で、1960年代より理論的に考えられていたようだが、これまでその存在が実際に確認されたことはなかった。しかし、ついに今回、LHC の実験チーム LHCb (Large Hadron Collider beauty) が初めて検出に成功したそうだ。

まず、通常のクォークモデルについてざっくり見てみよう。
1950年代頃から加速器による実験で奇妙な粒子が次々と生み出されていったんだが、それらをどうやって統一的な理論で説明すればいいか物理学者たちは途方に暮れいていた。そんな中、1964年、アメリカの物理学者マレー・ゲルマン (Murray Gell-Mann, 1929 - ) は、「クォークモデル」を提唱して、ハドロンの内部構造を記述するのに成功した。同じころ、アメリカの物理学者ジョージ・ツヴァイク (George Zweig, 1937 - ) も、ゲルマンとは独立に同じようなモデルを提唱し「エース」と名づけたが、結局は「クォーク」の名の方が浸透していった。この業績によってゲルマンは1969年にノーベル物理学賞を受賞したのだ。


クォークモデル
クォークモデルによれば、「クォーク」は \(+2e/3\) や \(-e/3\) という半端な電荷をもっていて、強い相互作用をする粒子であるハドロンのうち、バリオンと呼ばれる陽子や中性子の仲間の粒子は3個の「クォーク」からなり、さらにハドロンのもう一つの仲間の粒子である中間子は1対の「クォーク」と「反クォーク」からなっているというものだ。例えば、陽子 (\(\rm{p}^+\)) は2個の u クォーク (電荷は \(+2e/3\) ) と1個の d クォーク (電荷は \(-e/3\) ) からなっていて (電荷は \(+2e/3 + 2e/3 + (-e/3) = +e\) ) 、正電荷をもつ荷電パイ中間子 (\(\pi^+\)) は1個の u クォーク (電荷は \(+2e/3\) ) と1個の反 d クォーク (電荷は \(+e/3\) ) からなっている (電荷は \(+2e/3 + e/3 = +e\) ) 。

このクォークモデルから、別の組み合わせの粒子も考えられていた。その一つが5個のクォークからなるペンタクォークと呼ばれる粒子だ。しかし、これまで実験的に確認されたことはなかった。

それでは、ペンタクォークはどのような構造になっているのか。

ペンタクォーク
CERN のサイトの記事によると、2つの可能性が考えられるという。1つは、4個のクォークと1個の反クォークが互いに固く結びついているというモデルだ。もう一つは、バリオン (クォーク3個) と中間子 (クォーク1個と反クォーク1個) が組み合わさって一種の分子のようなものになっていて、バリオンと中間子は弱く結合しているというモデルだ。

これら2つの可能性のうちどちらなのかということについて、HLCb 実験チームは、今後、LHC の第2期実験で詳細なデータを集めていく予定だという。
こりゃ結果が楽しみだな。

関連記事はこちら。
AFPBB News:http://www.afpbb.com/articles/-/3054547
CERNの公式サイトの記事:
http://home.web.cern.ch/about/updates/2015/07/discovery-new-class-particles-lhc
http://press.web.cern.ch/press-releases/2015/07/cerns-lhcb-experiment-reports-observation-exotic-pentaquark-particles
American Physical Society (アメリカ物理学学会) の We bサイトの記事:
http://physics.aps.org/articles/v8/77

Date: 2015/08/08
Title: 温暖化の元凶は航空機にあり? ― 航空機の温暖化対策
Category: 地球環境
Keywords: 地球温暖化、航空機、温室効果ガス、排出削減


Newsweekを読んでいたら、気になる記事に遭遇した。
それは「温暖化の元凶は航空機にあり」という記事で、航空産業は自動車業界に比べて規制が緩く、温室効果ガス対策は抜け穴だらけで、強大な業界に阻まれて新たな基準策定も進まないという内容の、ある気象学者による欧米の巨大航空産業に対する苦言のような記事だ。

この記事の話はさておき、航空業界がこれまで取り組んできた燃料消費抑制策についてざっと見てみよう。以下に紹介する施策の中には、地球温暖化対策というよりは主に経営上の理由などから取り組んできたものもあるが、結果として燃料消費を抑え、温室効果ガス (CO2) 排出削減につながっている (地球温暖化問題に対する国際的な枠組みを設定した気候変動に関する国際連合枠組条約が締結されたのは1990年代だ) 。

1. 飛行ルート

様々な大圏コース (実線) 。破線は緯線。
[Wikipediaより]
飛行ルートを決める際、大圏コースと呼ばれる最短ルートをとるのというのが普通頭に浮かぶ。最短ルートを通れば最短時間で行くことができるので、燃料の消費も抑えられるからだ。大圏コースというのは、地球上の2点間を結んだ地球の球面に沿ったルートのことだ。例えば、ほぼ同じ経度上にある日本とオーストラリアを結ぶ場合、経線に沿ったルートが大圏コースになるが、ほぼ同じ緯度にある日本とアメリカを結ぶ場合、緯線に沿ったルートは大圏コースではなく、アラスカ付近を通るルートが大圏コースになるのだ。

実際には西行き (アメリカ → 日本) は大圏コースを利用することが多いが、東行き (日本 → アメリカ) ではハワイ付近を通るルートを通るのが多い。これは偏西風に乗って飛行することができるからだ (偏西風という空飛ぶ絨毯に乗っているようなものだ) 。このように、ルート上の気象条件 (この場合は偏西風) によっては飛行距離は長くなるが、結果的に最短時間で行くことができ、燃料消費も抑えられるのだ。ただし、実際には地形や風の状況、また直行便ではない場合は燃料補給地など、様々な要因を考慮して燃料消費を抑えられるように飛行ルートが決められるので、必ずしも大圏コースをとるわけではないのだ。

2. エンジン
燃料消費を抑えるには、何といってもエンジンの改良が不可欠だ。初期のジェットエンジンはターボジェットエンジンと呼ばれ、前方の吸気口から取り入れた空気を圧縮し、燃焼室で圧縮した空気と燃料を混合して燃焼させ、後方に排出される排気流によってのみ推力を得ていた。しかし、このタイプのエンジンは騒音が大きく、排煙や燃費の問題から、次第にターボファンエンジンに取って代わられていった。

ターボジェットエンジンの概略図
[Wikipediaより]

ターボファンエンジンの概略図
[Wikipediaより]

ターボファンエンジンというのは、ターボジェットエンジンの圧縮機前方の吸気口付近にファンを備えるエンジンで、ファンによって吸い込まれた空気のうち、燃焼に使われるのは一部で、残りの空気は圧縮機を介さずにエンジン外周にバイパスされて後方に吐き出すことによって推力の大部分を得ているのだ。このため、推進効率が良くなり燃費が向上するのだ (また、バイパスの空気流が燃焼ガスを覆うので騒音も抑えられる) 。

ファンに吸い込まれた空気のうち、バイパスされる空気の量と、圧縮機を通って燃焼に使われる空気の量の比をバイパス比というのだが、バイパス比が高いほど燃費がいいとされる。今日ではバイパス比が大きいものでは9を超えていて、さらにはボーイング787用にロールスロイスが開発したトレント1000はバイパス比が10を超えるといわれている。それだけジェットエンジンの燃費は改善されているというわけだ。
しかし、どれだけ燃費が改善されたのだろうか? (記事によると、00~14年で約 11% 改善されたとされる)

具体的な燃費については数値がわからなかったけど (ググっても見つからなかった) 、航空機の仕様から航続距離を最大燃料容量で割った数値を求めてみると、B787 で大体1リットル当たり 110~120 m となる。これは実際の燃費を表すわけではないが、燃費が改善されているとはいえ、ジェット旅客機は大量の燃料を消費することだけはわかる。

3. 塗装
一部の航空機では機体に塗装を施していないものもある。塗装自体は非常に薄いものだが、機体が大きい分、重量にすると数十トンにもなるそうで、塗装の重量もばかにならないのだ。JAL の B747-400 貨物機も燃料消費を抑えるため塗装が施されていなかったが、残念ながら今は運航していない。

4. 機体材料
機体材料も従来のアルミ合金 (ジュラルミン) から、より軽量で強度もある炭素繊維複合材が使われるようになってきた (炭素繊維複合材は鉄と比べて比重は 1/4 で、強度は10倍といわれている) 。まず、ボーイングでは、B777 で尾翼と、補強材に一次構造材として採用されているが、採用率は全体の 12% 程だ。しかし、B777 で使用実績をつみ、安全性が確認されたことから、B787 では主翼、胴体など素材の 50% にまで使用率が上がっている。一方のエアバスでは、世界最大の総2階建て航空機 A380 で機体重量の約 20%、新世代のワイドボディ機 A350XWB (中型の B787 から大型の B777 まで視野に入れているといわれるエアバスの対抗機種) に至っては約 53% で使われている。

5. 燃料
航空機燃料 (ジェット燃料) はケロシンと呼ばれる燃料 (わかりやすく言えば、水分の含有量を大幅に減らした高純度の灯油) が使われているが、近年では世界の航空業界がバイオジェット燃料を使用する取り組みを始めている。ニュージーランド航空などによる初期の試験飛行で信頼性を立証し、日本でも JAL や ANA が空輸飛行でバイオ燃料を使用する取り組みを行なっているようだ。さらにはルフトハンザ・ドイツ航空は6ヶ月間で1200便のバイオ燃料を使用した飛行を実施している。バイオ燃料は主に非食用植物を原料としていて、カーボン・ニュートラル(\(\rm CO_2\) の排出と吸収を均衡させた) とされている。他にも藻類 (例えば、ユーグレナ) など様々な原料からバイオ燃料の研究開発が進められているようだ。

他にも業界としていろいろ取り組んでいるのかもしれないが、現状の燃料消費抑制策についてはこれ位にしておこう。

それでは、燃料を使わない、あるいはできるだけ使わない航空機の実現について考えてみよう。

まずは、電力で航空機を飛ばすのは可能か?
これはすでに試験飛行が行なわれている。スイス連邦工科大学・ローザンヌ校で進行中のプロジェクトで、太陽エネルギーのみでの世界一周飛行に挑戦中の次世代ソーラー飛行機「ソーラー・インパルス2 (Solar Impulse 2) 」だ (これは2機目なので“2”という番号が付いている) 。これは少し前に名古屋に寄港したのがニュースになった飛行機だ。主翼と水平安定板 (水平尾翼の一部) の上面に17,248個もの太陽電池を敷き詰めて、日中はこれで発電して、その電力でプロペラを回して推力を得ると同時に、夜間飛行に備えて電池を充電しているのだ。ソーラー・インパルス2の巡航速度は 90 km/h (夜間は 60 km/h) 、巡航高度は 8,500 m (高度 12,000 m でも巡航可能) という。この飛行機は太陽エネルギーだけで飛行するので、\(\rm CO_2\) は全く排出しない。

つぎに、それまでのつなぎとして、ハイブリッド航空機 (いわゆる航空機版プリウス) のようなものはできないのか?
パワーを必要とする離陸・上昇時にはエンジンを使い、巡航時には太陽電池や燃料電池の電力を使うというものだ。これなら燃料消費も大幅に抑えられると思う。調べてみたら、ハイブリッド航空機用の推進システムの開発が始まっているようだ。こういうことは誰でも考えるもんだね。

ただし、どちらにしても現状ではまだ開発が始まったばかりで、実用化までには、様々な問題点をクリアしなければならない。一番問題となるのは太陽電池の大きさ、バッテリーの重量とパワーではないだろうか?

例えばソーラー・インパルス2では主翼に太陽電池を敷き詰めるので、1人乗りにもかかわらず翼幅が 72 m もあり、B747-8 (68.5 m) よりも大きくなってしまっている。さらに 633 kg のリチウムイオンバッテリーを搭載している。これは機体重量 (2300 kg) の 1/4 以上を占める。これで巡航速度は 90 km/h なので、さらにパワーアップを図ろうとすると、さらに多くの太陽電池とバッテリーが必要になり、大幅に重量が増えてしまう。そうするとあまりにも重くなりすぎて離陸すらできなくなってしまう。

なんだか絶望的な感じになってしまうほどの難題が立ちはだかっているが、人類は様々な困難を乗り越えてきたので、希望を持つことにしよう。

関連記事、資料はこちら。
ソーラー・インパルス2に関するナショナルジオグラフィックの記事:
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20150311/438801/
ネットで見つけた「バイオジェット燃料の動向」と題する資料:
http://gsdm.u-tokyo.ac.jp/file/140308s4k1_terasaki.pdf

Date: 2015/07/15
Title: 無人探査機「ニューホライズンズ」 冥王星に到達
Category: 太陽系
Keywords: 無人探査機、ニューホライズンズ、冥王星


NASA (米航空宇宙局) の無人探査機「ニューホライズンズ (New Horizons) 」が、2006年の打ち上げから10年近く、約50億kmの旅を経て、「冥王星」からわずか 12500 km の距離にまで到達して画像を送ってきた。

かつては太陽系第9惑星と考えられてきた「冥王星 (Pluto) 」は、今から85年前の1930年に、米国の天文学者クライド・トンボー (Clyde William Tombaugh) によって発見されたが、地球から余りにも遠いため (平均で約59億 km) 、地球からの観測が難しく、まだよくわからないことも多い。その後、2006年8月の国際天文学連合 (IAU) 総会で、惑星から準惑星 (dwarf planet) に格下げされたが、その前の同年1月に無人探査機ニューホライズンズが冥王星を目指して打ち上げられたのだ。

今回の観測で、従来は 2274 km と見積もられていた冥王星の直径は、それより少し大きい 2370 km だということが分かった (それでも月より小さい!) 。また、送られてきた画像には、大きさが 1600 km ほどもある「ハート型」の地形が鮮明に写っていた。

この後も、冥王星だけでなく、最大の衛星のカロン (Charon) も含めて続々と観測結果が明らかになっていくんだろうな。これはチェックしてかなければ。

関連記事はこちら。
AFPBB News:http://www.afpbb.com/articles/-/3054309
NASA:http://www.nasa.gov/press-release/nasas-three-billion-mile-journey-to-pluto-reaches-historic-encounter

Date: 2015/07/08
Title: 静止気象衛星「ひまわり8号」 運用開始される
Category: 気象
Keywords: 静止気象衛星、ひまわり8号


七夕の7月7日、気象庁の新しい静止気象衛星「ひまわり8号」の運用が開始された。
従来の「ひまわり7号」と比べて、何が変わったかというと、主に次の3点だ。

(1) 水平分解の倍増
ひまわり7号が可視光で 1 km、赤外で 4 km だったのに対して、ひまわり8号では可視光で 0.5~1 km、赤外で 2 km と倍増している。これは雲の様子などがより細かく捉えられるということだ。これによって、台風の眼もくっきり見えるようになったのだ。

(2) 高頻度観測
全球観測時間がひまわり7号では30分毎だったのが、ひまわり8号では10分毎にまで短縮されている。さらに、日本付近は常時2.5分毎と、高頻度で観測されるようになった。これによって、台風の動きや、積乱雲が急激に発達する様子、さらには火山の噴火による火山灰がどの方向にどのように広がっていっているか、というようなことをより正確に捉えることができるようになったのだ。

(3) バンド (チャンネル) 数の増加
ひまわり7号では、可視1バンド (白黒画像) と赤外4バンドの計5バンド (チャンネル) だったのに対して、ひまわり8号では、可視3バンド (合成カラー画像) 、近赤外3バンド、赤外10バンドの計16バンド (チャンネル) にまで増加しているので、様々な波長域での観測が可能になっている。これによって、従来は白黒画像だった衛星画像がカラー画像で見ることが可能になり、例えば、火山灰や微粒子と雲の区別がつきやすくなって火山の噴火を検知したり、黄砂が飛来する様子を捉えたり、さらには海面水温の詳細な分布が得られるようになるのだ。

言葉で書くより、実際の画像を見たほうがよくわかる。
気象庁が公開したサンプル画像・動画はこちら。
http://www.jma-net.go.jp/sat/data/web89/himawari8_sample_data.html

また、YouTube にも、ひまわり7号と8号の画像を比較した動画が公開されていた。
こりです。



日本は梅雨の真っただ中だし、これから台風シーズンも迎えるので (現に、日本の南には台風が3つも発生している!)、「ひまわり8号」 からの詳細なデータは、防災に大いに役立てられそうだ。

Date: 2015/06/19
Title: 太陽の300兆倍! 宇宙一明るい銀河発見
Category: 宇宙
Keywords: 銀河、明るさ、クエーサー


日経電子版をチェックしていたら、面白い記事を見つけた。
ちょっと前に、ブラックホールに高エネルギー粒子でできた「ファイアーウォール」が存在するかも、という話について書いたけど、今度は太陽の300兆倍も明るい銀河の話だ。

その銀河は、米航空宇宙局 (NASA) ジェット推進研究所 (JPL) の天文学者の研究チームが発見した「WISE J224607.57-052635.0」という銀河で、地球から約125億光年離れたところにあるそうで、この銀河の輝きは「怪物級」のクエーサーによるものだという。

クエーサー (quasar) というのは、準恒星状電波源 (quasi-stellar radio source) とも呼ばれ、非常に遠方にある活動銀河核の一種で、極めて明るく輝いている天体だ。そのスペクトルはドップラー効果によって大きく赤方偏移していて、ハッブルの法則によって極めて遠方にある天体なのだ。そのエネルギー源として有力視されているのが、中心にあるとされる大質量のブラックホールだ。大質量のブラックホールを取り巻いている降着円盤のガスやチリなどがブラックホールに落ち込むときの摩擦によって、強力な光 (電磁波) を放っているというものだ。

今回発見された銀河の観測には、NASA の広域赤外線探査衛星 " WISE (Wide-field Infrared Survey Explorer) " が使われた。というのも、このクエーサーはちりの雲に隠れていて、クエーサーからの光がちりに当たると、ちりから赤外線が放出される。その結果、銀河からはエネルギーの大半を赤外線として放出されることになる、ということらしい。検出された赤外線の量からクエーサーの明るさと質量を算出したところ、明るさは太陽の300兆倍、質量は太陽の100億倍にもなったという。
これほど巨大なクエーサーが放つ光が約125億年かけて地球まで届いたということは、銀河の中心にあるブラックホールがビッグバンから10億年余りという短い期間で巨大になったということを意味している。

しかし、これについてはまだよくわかっていないようだ。
研究チームを率いる天文学者は、「ゾウを育てたければ、子ゾウから育てるのが最短の道です」という。しかし、これについても、「“子ゾウ”サイズのブラックホールはどのようにして誕生したのか?」という疑問は残る。

さらにもう一つの謎があるという。ハーバード大学の天体物理学者によると、初期宇宙で最大規模のブラックホールと、彼らが現在観測している最大規模のブラックホールは、質量が同程度だという。つまり、短期間で巨大化しただけでなく、それ以上大きくならなかったのはなぜかという疑問が残るということだ。こうした疑問については、まだ手がかりさえつかめていという。

宇宙はまだまだ謎だらけということだね。今後の研究の進展に期待しよう。

関連記事はこちら。
日経電子版の記事:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO87858580Z00C15A6000000/
ナショナルジオグラフィック:http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/052900123/
もと記事はナショナルジオグラフィックの記事のようだ。
NASA の記事:http://www.jpl.nasa.gov/news/news.php?feature=4593

Date: 2015/06/03
Title: 宇宙にもファイアウオール?
Category: 宇宙
Keywords: ブラックホール、量子力学、事象の地平線、高エネルギー粒子、ファイアーウォール


日経電子版をチェックしていたら、面白い記事を見つけた。それは、
「宇宙にもファイアウオール? 『高エネルギー』の壁」
という記事だ。

大質量の星が一生を終え、超新星爆発を起こすと、その中心部が一気に押しつぶされて超高密度になった星は、自分自身の重力によって際限なく収縮していく。そして密度無限大のコアは強大な重力を生み出し、その周りの空間がものすごく歪められてしまう。その結果、ある半径より内側では脱出速度が光速を超え、光さえも逃げ出すことができない領域が生じる (この半径をシュバルツシルト半径という) 。これがブラックホールと呼ばれているもので、ブラックホールと通常の空間の境界を「事象の地平線」と呼んでいるのだ (事象の地平線というのは2次元に単純化したモデルで考えているので、より正確に言うと「事象の地平面」または「シュバルツシルト面」というのだ) 。

宇宙船に乗って宇宙飛行をしていて、ブラックホールに近づきすぎると、ブラックホールのものすごい重力にとらわれて宇宙船はブラックホールめがけてまさに宇宙の“奈落の底”に落ち込んでいくことになるが、事象の地平線を通過するとき、中にいる宇宙飛行士はどのように感じるのか?

一般相対性理論によれば、ブラックホールの重力に引っ張られている宇宙船内にいる観測者にとって、物理法則はあらゆる場所で同じなので、事象の地平線を通過しても同じはずで、宇宙飛行士は何も感じないだろうというのがこれまでの定説だった。(ただ、最後には、ブラックホールの強大な重力に引き寄せられていくときに、強大な潮汐力によって宇宙船もろとも引き延ばされていって、ついには引き裂かれてしまうという結末を迎えることになる。)

ところが、ブラックホールに量子力学を適用すると、事象の地平線ではこれまで考えられていたこととまったく異なることが起きている可能性があるという。カリフォルニア大学サンタバーバラ校のJ・ポルチンスキー博士らによると、事象の地平線には高エネルギー粒子でできた「ファイアーウォール」が存在するという。つまり、事象の地平線に到達した宇宙船は、このファイアーウォールにぶつかって粉々になってしまうという、衝撃的な結末になってしまうという。これまでは、事象の地平線を過ぎても時空は存在すると考えられていたけれど、博士らによると、時空の地平線で時空は終わっているという。
重力理論である一般相対性理論と、ミクロの世界を記述する量子力学とは非常に相性が悪く、両者を統合させる試みはまだ道半ばで、定説といえるものはまだできていないが、ファイアーウォールの研究によって両者の統合の道筋が見えてくるのではないかと博士らは期待しているようだ。

しかし、ファイアーウォール説については、異議を唱える科学者も多いようだ。一つには、ブラックホールファイアーウォールは、重力加速度による自由落下している観測者が観測する運動と、何もない空間に浮かんでいる観測者が観測する運動は区別できないとする「等価原理」 ― これはアインシュタインの一般相対性理論の基本原理となっている ― を破棄することを要求する、ということが関係しているようだ。

ファイアーウォールにまつわる論争はまだまだ続くのかな?
この辺のところについては、僕自身もよく知らないこともあるので、少し勉強してみるかな・・・。

関連記事はこちら。
日経電子版の記事:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO86997410Z10C15A5000000/
日経サイエンスのサイト:http://www.nikkei-science.com/201507_032.html

Date: 2015/05/26
Title: 『遺伝子組み換え蚊』でマラリアを撲滅?
Category: 医学
Keywords: マラリア、蚊、遺伝子組み換え


先週、「蚊に刺されやすい人の特徴とは?」というブログを書いたばかりだけど、Newsweek を読んでいたら、蚊に関する興味深い記事を見つけた。それは、
「『遺伝子組み換え蚊』でマラリアを撲滅せよ」 という短い記事だ。

蚊が媒介する病気といえば、マラリアやデング熱を思い浮かべるが、他にも黄熱病 (野口英世が研究の途上で感染し、亡くなったことで有名な病気だ) や西ナイル熱 (日本人にはあまり馴染はないが、感染例はあるようだ) などがある。これらの病気は途上国で発症する人が多いが、先進国でも発症が確認されることがある。日本でも去年の夏にデング熱の騒ぎがあったばかりだ。

蚊が病気を媒介することが最初に確認されたのは19世紀末で、イギリスの医学者ロナルド・ロスがマラリアが蚊によって媒介されることを突き止めた。これによって、蚊が媒介する病気と現代医学との戦いが始まったのだ。病気を抑制するためには、蚊の数を減らすか、撲滅することだが、これが現実味を帯びたのは、第一次大戦で化学兵器が開発されてからだ。それによって強力な殺虫剤が開発され、それ以降、蚊が媒介する病気との戦いは、有効な治療薬や殺虫剤など化学を武器にした戦いが続けられてきた。しかし、それによって薬に耐性をもつ虫やウィルスが出てきた。

そこで次なる一手として、遺伝子の世界に足を踏み入れた方向を目指し始めたようだ。つまり、遺伝子を組み替えて病気を媒介できない蚊を作り出して、この蚊を野に放ち、従来の病気を媒介する蚊と置き換えていこうというものだ。「マラリアを媒介できない蚊」は15年ほど前から欧米の研究チームが開発に取り組んでいて、実現する日も近いという。

しかし、それには大きな問題がある。
一つは、生物学的な封じ込めだ。マラリアを媒介できない蚊を遺伝子の組み換えで作り出すには、まずマラリアを媒介する“普通の”蚊を繁殖させる必要があるが、実験は BSL-3 (バイオセーフティレベル3) の施設で行わなければならない。その BSL-3 の施設でマラリアを媒介する蚊を封じ込めておかなければならないが、厳しい安全対策も完璧はありえないという。

もう一つは、遺伝子を組み替えてマラリアを媒介できないようにした蚊を野に放したらどうなるのかという問題がある。下手をすると、超強力なマラリアを媒介する「フランケンシュタイン蚊」に進化するかもしれないという得体のしれない不安もある。カリフォルニア大学の昆虫学者によれば、「1万世代にわたって繁殖する間に何が起きるか、正確に予想するすべはない」という。

「病気との戦いは、科学の進歩の証でもある。とはいえ、私たち人間は、ついに『最後の一線』を越えようとしているのかもしれない」と記事は結んでいる。
病気との戦いは重要な問題だ。その一方で遺伝子組み換えされた生物への漠然とした不安もある。悩ましい問題だ。

Date: 2015/04/24
Title: 世界最大の加速器 ― CERN の LHC ― 再稼働へ
Category: 素粒子
Keywords: CERN、LHC、第2期実験、標準モデル、超対称性粒子、暗黒物質


スイスのジュネーヴ近郊にある欧州合同原子核研究機構 (CERN) の大型ハドロン衝突型加速器 (LHC) は、3年前の2012年にヒッグス粒子を発見して、その存在を理論的に予言していたヒッグス博士らのノーベル賞受賞につながったのは記憶に新しい出来事だ。LHC はその後2年間にわたる改修工事が行われていたが、今月から再稼働していて、本格的な物理実験に向けて様々なテストが行われているようだ。

今回の改修によって、加速された粒子 (陽子) の衝突エネルギーは、これまでの 8 TeV からほぼ倍増の 13 TeV までに増強される。再稼働後の第2期実験で期待されているのは、素粒子論の基本的枠組みである標準モデル (標準理論ともいう) を越える理論とされる超対称性理論で存在が予言されている粒子「超対称性粒子」の探索だ。

その前にまず、標準モデルとはどういうものか。
僕らの周りの物質はどのような素粒子で構成されているのか。また、そのような素粒子にはどんな力が働いていて、どのような振る舞いをするのかということをまとめたものが標準モデル (標準理論) と言われるものだ。自然界の基本的な力には次の4つの力 ― 強い力 (強い相互作用ともいう) 、弱い力 (弱い相互作用ともいう) 、電磁気力 (電磁相互作用ともいう) 、重力 ― がある。このうち、強い力、弱い力、電磁気力の3つの力を記述しているのが素粒子の標準理論なのだ。

(1) 物質を構成する粒子について
物質を構成する粒子は、クォークと呼ばれる6種類の粒子、電子の仲間の3種類の粒子、ニュートリノの仲間の3種類の粒子、計12種類の粒子からなっている。クォークは \(+2e/3\) の電荷を持つものと、\(-e/3\) の電荷を持つものとがあり、電子の仲間の粒子は \(-e\) の電荷を持つ。ニュートリノは電気的に中性な粒子だ。これらの粒子には電荷の符号が反対の反粒子と呼ばれる粒子が存在する (ニュートリノは電気的に中性なので、反ニュートリノも中性粒子だ) 。また、これらの粒子は半整数のスピンを持っていて、フェルミ粒子と総称される。

さらに、これら物質を構成する粒子は、4種類 (クォーク2種類、電子の仲間1種類、ニュートリノ1種類) で「世代」と呼ばれる1つのグループを形成し、全部で3世代からなる。
僕らに馴染みのある陽子や中性子は、第1世代の「アップ」(電荷は \(+2e/3\) ) と「ダウン」(電荷は \(-e/3\) ) という2種類のクォークからなっていて、陽子はアップ・クォーク2個とダウン・クォーク1個、中性子はアップ・クォーク1個とダウン・クォーク2個からなっている。第1世代の電子とニュートリノの仲間は文字通り「電子」と「電子ニュートリノ」だ。
第2世代では、クォークは「チャーム」(電荷は \(+2e/3\) ) と「ストレンジ」(電荷は \(-e/3\) ) 、電子とニュートリノの仲間の粒子はそれぞれ「ミュー粒子 (ミューオンとも呼ばれる) 」と「ミューニュートリノ」からなっている。
第3世代では、クォークは「トップ」(電荷は \(+2e/3\) ) と「ボトム」(電荷は \(-e/3\) ) 、電子とニュートリノの仲間の粒子はそれぞれ「タウ粒子 (タウオンとも呼ばれる) 」と「タウニュートリノ」からなっている。
世代が上がるごとに、粒子の質量 (= 静止エネルギー) は大きくなる。

(2) 素粒子間に働く力について
素粒子間に働く力は、ゲージ粒子と呼ばれる整数スピンを持つ粒子 (ボース粒子と総称される) をやり取りすることで作用する。
強い力」は、クォーク間に働いてクォーク同士を結び付けている力で、それによって陽子や中性子などが作られる。クォーク間に働く強い力はグルーオンと呼ばれる粒子をやり取りすることで伝わり、量子色力学 (QCD) によって記述される。グルーオンは「赤」、「青」、「緑」などの色荷 (ただし、実際の色とは無関係) を持つが、電荷は 0 で、質量も 0 とされる。
弱い力」は、ベータ崩壊などの放射性同位元素の崩壊をするときに作用する力で、力を伝える粒子は、ウィーク・ボソン ( weak boson ) と総称される \(W^+\) ボソン、\(W^-\) ボソン、\(Z^0\) ボソンと呼ばれる粒子だ。\(W^+\) ボソンは電荷 \(+e\) を、\(W^-\) ボソンは電荷 \(-e\) を持つが、\(Z^0\) ボソンは電荷は 0 だ。質量は 100 GeV 前後と大きな質量を持っている。
電磁気力」は、僕らにお馴染みの電気と磁気の作用を及ぼす力で、力を伝える粒子は光子だ。光子は電荷 0 で、質量も 0 だ。
弱い力と電磁気力は電弱理論 (ワインバーグ=サラムの理論、またはワインバーグ=グラショウ=サラムの理論とも呼ばれる) によって統一的に記述される。

[補足]
ところで、重力も重力子 (グラビトンともいい、電荷 0 、質量 0 の粒子)をやり取りすることで作用すると考えられているけど、現時点では重力子は見つかっておらず、仮説の域を出ていない。重力の理論である一般相対性理論とミクロの世界を記述する量子力学を合わせた量子重力理論の構築は困難を極めていて、超弦理論がその困難を解決する可能性があるとされているが、現時点では定説という確固たる地位を得ているわけではない。
このような事情もあり、標準モデルでは重力を除く3つの力 (強い力、弱い力、電磁気力) を扱っているのだ。

(3) 素粒子に質量を与える粒子
最後に、素粒子に質量を与えるヒッグス粒子だ。1960年代半ばにアングレール、ブラウト、ヒッグスによって提唱された、素粒子に質量を与えるメカニズム (ヒッグス機構または BEH メカニズム) によってその存在が予言され、2012年に LHC での実験でやっと発見された、スピン 0 のボース粒子で、質量は約 126 GeV、電荷は 0 の粒子だ。

それでは、再稼働後の第2期実験で発見が期待されている超対称性粒子について。
「超対称性粒子 ( supersymmetric particle ) 」というのは、標準モデルで知られている既存の粒子にはそれぞれパートナーの粒子が存在すると考えられている仮想的な粒子だ。既存の粒子に対してスピンが 1/2 ずれただけで、電荷などは等しいとされている、フェルミ粒子に対しては未知のボース粒子が、ボース粒子に対しては未知のフェルミ粒子が存在するとされている。

宇宙ににある銀河の間には重力が働いているが、銀河団の近くにある銀河の運動から銀河団の全質量を見積もると、光学的な観測から見積もられる質量よりはるかに大きいことが分かった。その他の観測からも、同じように光学的に観測される物質よりはるかに多くの質量をもつ物質の存在がだんだんわかってきた。つまり、宇宙には光では見えないが質量は持つ未知の物質があると考えられるようになり、その見えない未知の物質を暗黒物質 (dark matter) と呼んでいるのだ。暗黒物質の正体は今もって分かっていないが、暗黒物質の候補として、素粒子論と天体物理学のそれぞれの立場から色々なアイデアが出されていて、素粒子論側からの一つのアイデアとして暗黒物質には超対称性粒子が含まれているというものがある。第2期実験で超対称性粒子が見つかれば、それを基に暗黒物質の正体について手掛かりが得られるかもしれないと期待されているのだ。

その他にも、ヒッグス粒子の詳細測定、反物質、クォーク・グルーオン・プラズマの詳細な観測など、多くの実験が計画されているようだ。また世界を驚かせるような発見が期待されているのだ。

関連記事はこちら。
AFPBB News:http://www.afpbb.com/articles/-/3044610?pid=15594107
CERNの公式サイトの記事:
http://press.web.cern.ch/backgrounders/lhc-season-2-new-frontiers-physics
http://home.web.cern.ch/about/updates/2015/03/lhc-injector-tests-begin
http://home.web.cern.ch/about/updates/2015/04/lhc-preparations-collisions-13-tev
http://home.web.cern.ch/about/updates/2015/04/first-successful-beam-record-energy-65-tev

Date: 2015/03/23
Title: 4色型色覚は4人に1人 ― ホントか?
Category: 医学、その他
Keywords: 色覚、カラーテスト、網膜、錐体細胞、色覚異常、発生率、ニューロマーケティング、脳科学


ネットのニュースを見ていたら、面白い記事を見つけた。それは、
「すべての色が見えるのは4人に1人?! 1億以上の色を識別できる人がわかるカラーテストが話題に」という記事だ。

記事によると、ニューロマーケティングの専門家、Diana Derval 氏 (って、誰だ?) が、ネット上に投稿した色覚テストの画像がネットで話題になっているらしい。記事には色覚テストの画像も掲載されていて、その画像の色をすべて見分けられれば、普通の人より多くの色を識別できる 「4色型色覚」 ということらしい。


Diana Derval氏の色覚テストの画像
(c)DervalResearch
くだんの専門家によると、見えた色が20色未満の人は 「2色型色覚」 で、人口の 1/4 がこのタイプ。20~32色見えた人は 「3色型色覚」 で、人口の 1/2 がこのタイプ。33~39色見えた人は 「4色型色覚」 で、人口の 1/4 がこのタイプだそうだ。
え~っ?これってホント?

まず、色覚とは、網膜の中にある錐体細胞と呼ばれる色 (光の波長) 反応する細胞が反応して色として認識されるが、人は通常異なる波長帯に反応する3種類の錐体細胞を持っている (長波長に反応する赤錐体、中波長に反応する緑錐体、短波長に反応する青錐体) 。

次に、2色型色覚は色盲ということを意味するけど、調べた限りでは、2色型色覚 (色盲) と異常3色型色覚 (色弱;赤や緑の区別がつきづらい) の人を合わせた発生率は、人種や性別で異なるけど、日本人の場合、男性で20人に1人、女性で200人に1人、フランスや北欧では男性で10人に1人、女性で200人に1人、逆にアフリカ系の人では発生率は低いとされているようだ (2~4% 程度) 。男女で発生率に差が出ているのは、色覚異常は23対ある染色体のうち、性染色体と呼ばれる1対の染色体 (男性はXY、女性はXX) のうち、X染色体の遺伝子 (DNA) に異常があるために発生するが、男性はX染色体は一つしか持っていないのに対して、女性はX染色体を二つ持つため、どちらか一方に異常があっても、もう一方が正常であれば色覚異常は発現しない (保因者となる) からだ。また、X染色体の異常で発生するということは、色覚異常は遺伝するということを意味する。

この専門家といわれている人が、「2色型色覚」、「3色型色覚」、「4色型色覚」 をどのような意味で使っているのか分からないけど、普通の意味で使っているのならば、この人の主張では2色型色覚の人が人口の25%ということは、色覚異常の人が “異常に多い” ということになる。
また、4色型色覚については、一説によると、世界の女性の2~3%は4色色覚だという。また、別の研究では女性の 50%、男性の 8% の人が4色色覚だという。いずれにしても、4色色覚の実態はまだよく分かっていないようだ。
この人の主張については、どこまで信憑性があるのかイマイチ疑問だなぁ・・・。

いろいろ疑問はあるけど、試しにやってみたら、36色位は見分けられた。ということは、僕は 「4色型色覚」 ということになるのかな? ホンマかいな。
これがどこまで信憑性があるのかどうか分からないけど、そういうことにしておこう
まぁ、これも血液型性格占いなどと同じで、「ホンマでっか?」という感じで受け止めて、飲み会や茶飲み話の話題として盛り上がるだけなら、害はないのかな?


話は変わるが、「ニューロマーケティング」 っていったい何だ?
“ニューロ” という接頭語がついているということは、脳神経に関係がありそうだけど。

一応ネットで調べてみたら、脳科学の計測手法を応用して、消費者が商品や広告、チラシなどを見たり、触れたりしたときの脳の反応を計測して、消費者の心理や行動の仕組みを解明して、マーケティングに応用しようという試みのようだ。

米国を中心に研究が始まったようで、具体的には2004年に米ベイラー医科大学で行われた、コカコーラとペプシコーラの選好に関する実験があるそうだ。コカコーラ派とペプシコーラ派のそれぞれの被験者に対して、ブランド名を伏せた場合と伏せなかった場合で、飲んでいるときの脳の活動を計測して比較したもので、コカコーラが好きな人は、ブランド名を伏せなかった場合、前頭葉の活動が活発になった (つまり、ブランド名に影響された) というものだ。

米国を中心に日本でもいろいろ研究はされているようだが、マーケティングへの具体的な応用はこれからのようだ。BMI (ブレイン・マシン・インターフェイス) のような脳と機械をつなげる技術が発展していけば、マーケティングへの応用も広がっていくのでは、とういことのようだ。
なるほど、そうですかぁ~。

関連記事はこちら。
元ネタのニュース記事:http://news.biglobe.ne.jp/trend/0323/blnews_150323_3045745769.html

Date: 2015/03/17
Title: 木星最大の衛星ガニメデに巨大な海の証拠見つかる
Category: 太陽系
Keywords: 木星、衛星、ガニメデ、オーロラ、地下海


土星の衛星エンケラドスに生命生存可能な環境が見つかったと話題になっているけど、今度は木星の衛星ガニメデの表面を覆っている分厚い氷の下に、大量の水が存在する地下海があることが確認されたという記事を見つけた。それは、
「木星最大の衛星ガニメデに地下海、オーロラ観測で確認 NASA」という記事だ。

まず、ガニメデ (Ganymede) は、木星の数ある衛星のうち、ガリレオ衛星と呼ばれる有名な4つの衛星 (イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト) の一つで、木星最大の衛星だ。直径約 5260 km で水星より大きく、木星からの距離は約 100万 km で、7日ほどで木星の周りを回っている。

NASA によると、今回の観測で鍵となるのはオーロラで、オーロラが発生するということは、ガニメデに磁場が存在するということだ。このオーロラの動きを詳細に観測することで、その地殻の下のあるモノの動きを調べることができるのだ。研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡 (Hubble Space Telescope; HST) を使った紫外線による観測で、ガニメデの2つのオーロラが揺れ動く様子を詳細に観測することによって、ガニメデの磁場に影響を与えている大量の海水が存在することを確認することができたという。
オーロラの揺れは木星の磁場とガニメデの磁場が相互作用することで引き起こされているが、もし、海水の海 (つまり導電性の海) が存在すれば、木星の磁場が海の中に2次的な磁場を作り、この磁場が木星の磁場を打ち消そうとする。これがオーロラの揺れを抑える働きをするという。
今回の観測から、海は厚さ 150 km もの分厚い氷の下にあり、その深さは地球の海より10倍深い 100 kmと 見積もられていて、水の量は地球表面にある水の量より多いという。

これでまた、地球以外の天体で生命の生存可能な環境に必要な条件のうち、液体の水の存在が確認されたことになる。あとは有機物と熱などのエネルギーだが、これも見つかれば、地球外生命体の存在の可能性に期待が高まるのかな?

YouTube にも関連の動画がいくつか投稿されていた。


関連記事はこちら。
AFPBB News:http://www.afpbb.com/articles/-/3042350?pid=15461879
NASA のプレスリリース:
http://www.nasa.gov/press/2015/march/nasa-s-hubble-observations-suggest-underground-ocean-on-jupiters-largest-moon/#.VQV_R9KsWSo
日経電子版:http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG15H3L_W5A310C1000000/

Date: 2015/03/12
Title: 土星の衛星に生命生息可能な環境発見!
Category: 太陽系
Keywords: 土星、衛星、エンケラドス、生命生存可能性


ネットのニュースをチェックしていたら、すごいニュースを見つけた (TVのニュースでもやっていた) 。それは、
「土星の衛星に生命生息可能な環境発見 東大など」という記事だ。

太陽系の地球以外の惑星とその衛星について、生命存在の可能性について探査が続けられているが、ついに、地球以外の天体で生命の存在が可能な環境が発見されたというニュースだ。東大と海洋研究開発機構と欧米の国際研究チームがイギリスの科学誌『Nature』に発表したもので、発見された場所は土星の第2衛星エンケラドス (Enceladus) だ。

土星の衛星といえば、タイタン (Titan) やミマス (Mimas) 位しか名前が思い浮かばないけど、分かっているだけでたしか60個位衛星が存在するはずだ。その中のひとつ、エンケラドスは直径 500 km 程と月の 1/7 位しかないが、土星の衛星としては6番目に大きい衛星だ。土星からの距離は約 24万km で、33時間ほどで公転している。表面のアルベド (反射率) が高く、氷で覆われている。

NASA (米航空宇宙局) / ESA (欧州宇宙機関) の無人土星探査機カッシーニ (Cassini) による観測で、これまで、南極付近のひび割れから氷の粒子や水蒸気が噴出しているのが発見されていて、氷の下に液体の水が存在する可能性があることが確認されていた。その後、その噴出水の中にナノメートルサイズ [1] の、シリコンを多く含む微粒子が含まれていることがわかったが、その発生源は謎のままだった。

今回の発見は、質量分析スペクトルによる分析の結果、この微粒子の主成分がシリカ(\(\rm SiO_2\))であることで、さらに実験室での実験の結果、エンケラドス内部の岩石コアの温度が 90 ℃ 以上で、pH 8.5 以上の海水と接して反応することで、ナノメートルサイズのシリカ微粒子が形成され得ることが示されたことだ。コアの温度を 90℃ 以上にまで上昇させる熱源については、よく分かっていないようだ。潮汐力による摩擦熱や、内部の放射性元素の崩壊などが考えられているが、論文の著者らは、岩石と水の反応による熱放出も考えらるとしているようだ。

これと似た環境が地球にもある。深海の石灰岩のチムニーから熱水が噴出している場所 (熱水噴出口) だ。その周辺ではジャイアントチューブワーム、二枚貝、カニなどの生物が活発に活動しているのだ。
カッシーニは以前にもエンケラドスで有機物の存在を確認していたので、今回の熱水活動の発見で、生命の存在に必要不可欠な三要素とされる、液体の水、有機物、熱エネルギーのすべてが見つかったことになる。これによって、生命存在の可能性が高まってきたのだ。

個人的には、地球以外の天体で生命が生息可能な環境が見つかるとしたら、木星の衛星エウロパ (Europa) かなぁ、と思っていたが、エンケラドスで最初に見つかるとはビックリだ。あとは、実際に微生物のような生命体が見つかるかどうか、ということだな・・・。
見つかるかなぁ?

話は飛ぶけど、エウロパといえば、僕は映画『2010年』[2] を思い出す。映画ではエウロパに何らかの生命体が存在することを示唆していて、最後に地球に向けて発信されたメッセージ「これらの世界は全てあなた方のものだ。ただし、エウロパは除く。決して着陸してはならない。」は、意味深だった。

関連記事はこちら。
日経電子版:
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG11H8X_S5A310C1CR0000/
Nature:
http://www.nature.com/nature/journal/v519/n7542/full/nature14262.html
http://www.nature.com/nature/journal/v519/n7542/full/519162a.html
NASA:
http://www.jpl.nasa.gov/news/news.php?release=2008-050


[1] 1ナノメートル (nm) = 10-9 m (10億分のメートル)

[2] 『2010年』は、スタンリー・キューブリック監督の有名な映画『2001年宇宙の旅』の続編で、監督はピーター・ハイアムズ。どちらも原作はアーサー・C・クラークのSF小説。

Date: 2015/03/02
Title: 2014年は史上最も暑かった
Category: 気象
Keywords: WMO、世界平均気温、地球温暖化、温室効果ガス排出削減


AFPBB News をチェックしていて興味深い記事を見つけた。それは、
「2014年は『史上最も暑かった年』、国連報告」という記事だ。

世界気象機関 (World Meteorological Organization: WMO) によると、2014年は史上最も暑かった年だったそうだ。
WMO のプレス・リリースによると、2014年の世界平均気温は、1961-1990 の30年平均気温 14℃ と比較すると、0.57℃ 上回ったという。最も暑かった年の15のうち14は今世紀に起こっていて、大気中の温室効果ガスが増え続け、海洋の熱量が増加すれば、より温暖化した将来をもたらすことを考慮すると、温暖化は続いていくと予測されている。

それでは、今後温暖化の傾向が続くと世界はどうなるか?
今世紀末の地球の平均気温についてはいくつか予測があるが、人類が今後も温室効果ガスを放出し続けるという最悪のシナリオでは、産業革命以前の水準に対して 4℃ 以上気温が上昇すると予測されている。もしそうなると、極端な豪雨と洪水や干ばつの頻発、海面上昇による沿岸部の水没、台風の強大化、さらには水や食料をめぐる紛争が起こるなど、地球は壊滅的な状況になると科学者らは警鐘を鳴らしている。

国連は気温上昇を2℃未満に抑えるという目標を設定していて、今年12月にパリで開かれる国連気候変動枠組条約 (UN Framework Convention on Climate Change: UNFCCC) の第21回締約国会議 (COP21) での調印を目指しているようだ。

COP21 で新たな道筋がつけられ、今後世界がどのように行動していくかで、温暖化のシナリオも変わっていくとは思うが・・・。
温室効果ガスの2大排出国である中国とアメリカが、昨年末にそろって削減目標を発表するなど、表向きは異例の協調姿勢を見せたが、それぞれに思惑はあるだろうし、どうなるかなぁ。

国家間の枠組条約も大事だけど、具体的な温室効果ガス排出削減への取り組みはもっと大事だ。結局は人間の活動によって温室効果ガスを大量に排出させているので、人間の意識と行動が変わらなければ、排出削減はできないし、そのための技術革新も進まない。その点、日本には優れた省エネ技術があるし、水素を使った燃料電池車に代表されるような技術革新も進んできているので、日本が保有している技術をつかって温室効果ガス排出削減で世界に貢献できるし、新たなビジネスにも結び付けられると思うけど、実際そうなっていくことを期待したい。

関連記事、サイトはこちら。
AFPBB News の記事:http://www.afpbb.com/articles/-/3038559?pid=15193714
WMO のプレス・リリース:
https://www.wmo.int/media/?q=content/warming-trend-continues-2014
COP21のサイト:http://www.cop21.gouv.fr/en

Date: 2015/02/26
Title: 7万年前に太陽系と恒星「最接近」か?
Category: 太陽系
Keywords: 太陽系外縁、オールトの雲、恒星、最接近


ネットのニュースをチェックしていたら、面白い記事を見つけた。それは、
「太陽系と恒星「最接近」か、7万年前に「危機」 国際研究」
という記事だ。

今から7万年ほど前、ある恒星が太陽系外縁部を取り巻いているオールトの雲の中を通過した可能性が高いという研究結果が、天文学・天体物理学の学術誌『Astrophysical Journal Letters』に掲載されたそうだ。
発表したのは米国ロチェスター大学 (University of Rochester) を中心とした研究チームで、それによると、最接近したときの太陽からの距離は約0.8光年 (約7.6兆 km) で、これは天文学的スケールでいうと地球との「ニアミス」といえるほどの事件だ。この距離は、太陽系に最も近い恒星であるプロキシマ・ケンタウリ (Proxima Centauri;ケンタウルス座に位置する赤色矮星) までの距離4.22光年の5分の1ほどの距離だ。
最接近したこの星は、発見者にちなんで「ショルツ星 (Scholz's star) 」と呼ばれる赤色矮星で、現在は20光年離れた距離にあるという。研究チームは、大型望遠鏡と分光器を使ってショルツ星を観測し、算出された速度から時間的に逆算して軌道を求めて、その結果約7万年前に太陽系に最接近し、現在は遠ざかりつつあることを突き止めたという。

ところで、今から7万年前といえば、現生人類がアフリカから移動を始めた頃だといわれていて、ネアンデルタール人もまだ絶滅していない頃だ。その頃に恒星がオールトの雲の中を通過したとするなら、その影響で多くの彗星が地球まで飛来した可能性がある。もしそうなら、現生人類やネアンデルタール人はその様子を目にしたのかなぁ?

もし彗星の嵐が地球を襲ったなら、地球上の生命に壊滅的な被害をもたらしたかもしれない。そこで、過去に起こった生物の大量絶滅について調べてみると、過去に大量絶滅は5回あったとされている (これを “ビッグファイブ” というそうだ) 。

1回目は 「オルドビス紀大量絶滅 (オルドビス紀/シルル紀境界) 」 と言われるもので、古生代のオルドビス紀末 (約4億4400万年前) に三葉虫、サンゴ類など、当時生息していた全ての生物種の 85% が絶滅したと言われている。原因は諸説あるようだけど、そのひとつにガンマ線バースト説がある。ガンマ線バーストとは、大質量星が超新星爆発を起こしたときに短時間に大量のガンマ線を放出する現象だが、オルドビス紀末に太陽系に近い恒星が超新星爆発を起こし、地球に大量のガンマ線が降り注いでオゾン層を破壊して、地上に紫外線が直接届くようになって生物が絶滅したというものだ。

2回目は 「デボン紀大量絶滅 (フラスニアン期/ファメニアン期境界) 」 と言われるもので、古生代デボン紀後期 (約3億7400万年前) に、板皮類や甲冑魚などの多くの海生生物が絶滅し、生物種の 82% が姿を消したと言われている。原因は寒冷化や海洋無酸素事変といった著しい環境変化だと言われている。また、巨大隕石の衝突による環境の激変も指摘されているようだが、大量絶滅との因果関係はわかっていないようだ。

3回目は 「ペルム紀大量絶滅 (古生代/中生代境界) 」 と言われるもので、古生代後期のペルム紀末 (約2億5100万年前) に地球史上最大の大量絶滅がおこった。生物種のおよそ 95% が姿を消したと言われていて、この時代まで生きながらえていた三葉虫も、このときどどめを刺されて絶滅したのだ。原因は諸説あるようだけど、そのひとつに、超大陸パンゲアの形成がある。それによって火山活動が活発になって大量絶滅をもたらしたという。

4回目は 「三畳紀大量絶滅 (三畳紀/ジュラ紀境界) 」 と言われるもので、中生代の三畳紀末 (約1億9960万年前) に起こり、地球上の生物のおよそ 76% が姿を消したと言われていて、多くの種類のアンモナイトが絶滅し、爬虫類も大型のものを中心に多くが絶滅したようだ。このとき生き残った恐竜はその後急速に繁栄して、地球上を闊歩し、時代を謳歌することになる。原因は火山活動との関連が有力視されているようだ。

5回目は 「白亜紀大量絶滅 (中生代/新生代境界) 」 と言われるもので、今から6550万年前の白亜紀末期に恐竜が絶滅した出来事で、もっとも有名な生物大量絶滅だ。このとき、全ての生物種のおよそ 70% が死に絶えたと言われている。原因として有力視されているものは、小惑星の衝突だ。メキシコのユカタン半島にあるチチュルブ・クレーターがそのときの小惑星衝突の痕跡だとされている。このとき巻き上げられた大量の微粒子が太陽光を遮って気温を低下させて衝突の冬をもたらし、さらに大量に降った酸性雨によって環境が激変し、食物連鎖が破壊されて大量絶滅に至ったとされる。

しかし、いずれも人類が誕生するはるか昔に起こった出来事だ。
7万年前頃に生物に壊滅的な被害をもたらした出来事は起こっていないようなので、あまり影響はなかったのかな? (多少の影響はあったのかもしれないけど)

今後、彗星の嵐をもたらすような恒星の最接近が起こり得るのだろうか?
天文学者らによると、その心配はいらないようだ。現在のところ、恒星が太陽系に最接近するのは24~47万年後で、オールトの雲には突入しないと予想されているそうだ。それより、現在地球近傍をまわっている小惑星の衝突の方が可能性としては大きいと思うけど・・・。

関連記事はこちら。
ナショナル・ジオグラフィックの記事:
http://nng.nikkeibp.co.jp/nng/article/20150219/436162/
生物大量絶滅に関する記事:
http://daizetumetu.com/genninn
http://www.brh.co.jp/seimeishi/journal/044/research_11.html

Date: 2015/02/16
Title: 宇宙に浮かぶ 「スマイル」
Category: 宇宙
Keywords: ハッブル宇宙望遠鏡、銀河団、一般相対性理論、重力レンズ効果、アインシュタイン・リング


ネットのニュースをチェックしていたら、面白い記事を見つけた。それは、
「宇宙から届いた『スマイル』NASA が銀河団の画像公開」
という記事で、NASA (米航空宇宙局) が公開したハッブル宇宙望遠鏡 (Hubble Space Telescope: HST) で撮影した銀河団の画像が、まるで「スマイルくん」の顔のようだというものだ。


笑う銀河団 SDSS J1038+4849
Image Credit: NASA
この “笑う銀河団” は「SDSS J1038+4849」という銀河団で、オレンジ色で非常に明るく輝いている2つの銀河の「目」と白い銀河の「鼻」、さらには重力レンズ効果によってつくられた青白い円弧が「口」のように見える。さらに「顔」の輪郭のように見える青白い線もある。

重力レンズ効果というのはアインシュタインの一般相対性理論によって説明される現象だが、銀河団は宇宙で最も質量の大きい天体で、とても強い重力作用を及ぼすため、その周りの時空が歪められられ、あたかも宇宙のレンズのように振舞うのだ。そのため、銀河団の背後の光が拡大されたり、歪められたり、曲げられたりするのだ。

重力レンズ効果によって歪められた像は、光源とレンズと観測者の位置関係によって、複数の像が見えたり、リング状像が見えたりするのだが、今回のようなリング状の像は、アインシュタイン・リングと呼ばれていて、光源とレンズと観測者が一直線に並んでいると観測されるのだ。

それにしても、今回の「スマイル」は偶然とはいえ、あまりにもそれらしく見えてしまう。まさに自然のイタズラという感じだなぁ。

関連記事はこちら。
AFPBB News:http://www.afpbb.com/articles/-/3028312?pid=14557236
NASA の記事:http://www.nasa.gov/content/hubble-sees-a-smiling-lens/#.VOHrN-asWSo
ESAの記事:http://www.spacetelescope.org/images/potw1506a/

Date: 2015/02/01
Title: 「冬の大三角形」と「冬の大六角形」
Category: 宇宙
Keywords: 星座、恒星、冬の大三角形、冬の大六角形


真夜中近く、ベランダに出て夜空を見上げたら、冬の大三角形がくっきり見えているのに気がついた。
「冬の大三角形」とは、次の3つの1等星をつなぐと正三角形に近い形になるので、そう呼ばれているのだ。

 (1) おおいぬ座 \(\alpha\) 星 シリウス
 (2) こいぬ座 \(\alpha\) 星 プロキオン
 (3) オリオン座 \(\alpha\) 星 ベテルギウス


このうち、ベテルギウスかシリウスを目印に空をみると見つけやすい。
ちなみに、シリウスとプロキオンを含む6つの1等星をつなぐと大きなダイヤモンドの形になるので、「冬のダイヤモンド」とか「冬の大六角形」と呼ばれている。

 (1) おおいぬ座 \(\alpha\) 星 シリウス
 (2) こいぬ座 \(\alpha\) 星 プロキオン
 (3) ふたご座 \(\beta\) 星 ポルックス
 (4) ぎょしゃ座 \(\alpha\) 星 カペラ
 (5) おうし座 \(\alpha\) 星 アルデバラン
 (6) オリオン座 \(\beta\) 星 リゲル



「冬の大三角形」と「冬のダイヤモンド」
これらの恒星がどのような星か、ざっくり説明してみると、
[A] シリウス (Sirius)
シリウスは地球から見て全天でもっとも明るい恒星 (太陽を除く) なので、見つけやすい星だ。シリウスは一つの星のように見えるが、「シリウスA」と「シリウスB」という2つの星からなる連星だ。主星はシリウスAで、伴星のシリウスBは白色矮星なのだ。
[B] プロキオン (Procyon)
薄黄色の恒星で、シリウスと同様に連星で、白色矮星の伴星を伴っている。
[C] ベテルギウス (Betelgeuse)
オリオン座の三つ星の左上にある赤く光っている星だ。これもすぐわかる。この星は質量の大きな赤色超巨星で、いずれ超新星爆発を起こすとみられている。
[D] ポルックス (Pollux)
黄色がかった橙色をした恒星で、木星の1.5倍ほどの質量を持つ惑星を持つことで知られている。
[E] カペラ (Capella)
太陽とだいたい同じ黄色い光を放っているが、実は、2つの黄色巨星からなっている。また、近くに2つの赤色矮星があり、全体としては4連星なのだ。
[F] アルデバラン (Aldebaran)
オレンジ色に光っている星だが、水素の核融合反応が終わり、ヘリウムの核融合反応が始まって、主系列星から赤色巨星に移行している段階と考えられている。これも連星で、小さな赤色矮星を伴っている。
[G] リゲル (Rigel)
オリオン座の三つ星の右下にある青白く光っている星だ。この星は青色超巨星で質量が非常に大きいので、中心部での水素の核融合反応が急速に進んでいて、あと数千万年でヘリウムの核融合反応が始まって赤色超巨星になり、そのうち超新星爆発を起こすと考えられている。

冬の第三角形の写真をとろうと思ったが、三角形が大きすぎてフレームに納まらなかったので諦めた (それに、オリオン座のベテルギウスのちょっと上の方に月があって、月の明かりが強すぎてうまく撮れなかった) 。

関連サイトはこちら。
AstroArts:冬の星空を楽しもう
http://www.astroarts.co.jp/special/2005winter/index-j.shtml
http://www.astroarts.co.jp/special/2005winter/constellation-j.shtml#seizaa
http://www.astroarts.co.jp/special/2005winter/image/constellation1.jpg

Date: 2015/01/26
Title: 太陽系に未発見の惑星2つ?
Category: 太陽系
Keywords: ETNO、惑星、未発見


AFPBB Newsをチェックしていたら、面白い記事を見つけた。それは、
「太陽系に未発見の惑星2つ?天文学者ら」
という記事だ。

太陽系の惑星は、2006年の国際天文学連合 (IAU) の総会で惑星の定義が見直され、それまで9番目の惑星と考えられてきた 「冥王星」 は 「準惑星 (dwarf planet) 」 に分類することになって、惑星ではなくなった。それ以来、太陽系の惑星は8個になってしまっていたが、今回、英国王立天文学会の学会誌 " Monthly Notices of the Royal Astronomical Society " において、スペインと英国の天文学者らによって 「少なくともあと2個は存在するはずだ」と発表されたようだ。

太陽から非常に遠く離れている天体 ― これを ETNO (Extreme Trans-Neptunian Object [1] :「海王星をはるかに越えた向こうにある天体」という意味) というそうだが、これまでは、太陽からの距離が約150天文単位 [2] で、その軌道面は太陽系の他の惑星とほぼ同一面内 [3] にあると考えられていた。しかし、天文学者らが十数個の ETNO を観測したところ、太陽からの距離は 150~525 天文単位と広い範囲にばらついていて、軌道面も太陽系の他の惑星の軌道面から約20° 傾いていたという [3]

これが何を意味しているかというと、天文学者らによると、ETNO よりずっと大きい天体 (つまり惑星) が ETNO の近くに存在していて、その “惑星” が ETNO の軌道に影響を与えているのではないか、ということのようだ。それも、“惑星” は少なくともあと2個はあるはずだということらしい。

太陽系の惑星は9個から8個に減ってしまって久しいけど、これらの “惑星” が確認されて、太陽系の惑星がまた増えるということになればうれしいな。

関連サイトはこちら。
AFPBB News:http://www.afpbb.com/articles/-/3037058?pid=15106058


[1] ふつう、海王星軌道の外側の軌道をまわる天体を総称して、「太陽系外縁天体 (Trans-Neptunian Object: TNO) 」 といい、エッジワース・カイパー・ベルト (Edgeworth-Kuiper Belt: EKB) やオールトの雲、それから惑星に分類されなくなった冥王星もこれに含まれる。ニュース記事にある “ETNO” が TNO を指しているのか、あるいは TNO のなかでも特に太陽からの距離が大きいものを ETNO と呼んでいるのかどうか分からないが、ETNO は太陽からはるか遠くにある天体ということだ。

ちなみに、エッジワース・カイパー・ベルトというのは、海王星軌道 (太陽からの平均距離は約 30 au) より外側にあって、 土星の環のような円盤状に天体が密集している領域のことで、軌道長半径は 30 au より大きく、狭義では 48~50 au まで、広義では数百 au までとされる (エッジワース・カイパー・ベルトはいろんな区分が定義されているようだが、ここでは一般的な説明に留めておこう) 。
また、オールトの雲というのは、太陽からの距離が概ね 10,000 au 、もしくは太陽からの重力が他の恒星や銀河系の重力と同程度になる 100,000 au の間に球殻状に広がっているとされる仮想的な天体群のことで、現在のところその存在は明確には確認されていないようだ。

[2] 天文単位 (astronomical unit: au) というのは、地球と太陽の平均距離に由来する長さの単位で、\(\rm{1\,au = 1.495978707 \times 10^{11}\,m}\) (約1億5000万 km) という値になる。

[3] 太陽系の8つの惑星の、太陽の赤道面 (太陽の自転軸に垂直な平面) に対する軌道傾斜角は、概ね ±5° の範囲にあるので (言い換えれば、太陽系の惑星の軌道面の、太陽の赤道面に対する傾きは、概ね ±5° の範囲にある) 、太陽系の惑星はほぼ太陽の赤道面に沿って動いていることになる。ETNO は太陽系の惑星の軌道面から (太陽の赤道面に対して) 約 20° 傾いていたというから、大きな軌道傾斜角をもっていることになる。ちなみに、冥王星の軌道傾斜角は約 17° なので、ETNO の軌道は冥王星以上に傾いていることになる。

Date: 2015/01/21
Title: サンゴの白化現象からの回復を左右する要因特定か?
Category: 環境
Keywords: サンゴ、白化現象


ネットでニュースを検索していたら、この記事が目にとまった。

美しいサンゴ礁が壊滅的な打撃を受けているサンゴの「白化」現象。この白化現象は海水温度の急激な上昇によって引き起こされていると考えられているが、白化現象に対してサンゴ礁が持つ回復力を高める可能性のある要因を特定したとする論文が発表されたようだ。
発表したのはオーストラリア・ジェームズクック大学 (James Cook University) などの研究チームで、それによると、サンゴ礁が白化現象を起こした後に死滅するか否かは、5つの条件で決まる可能性があるらしい。その5つの条件とは、(1) 水深、(2) 白化する前のサンゴ礁の物理的構造、(3) 栄養レベル、(4) 魚が食べる藻の量、(5) 若いサンゴの生存率、だそうだ。

まず、サンゴと藻の共生関係について。
サンゴとサンゴを覆う藻類とは互いに共生関係にある。サンゴの表面に生息する渦鞭毛藻と呼ばれる単細胞藻類は、サンゴから窒素やリンなどを取り込んで、光合成によってエネルギーに変換している。このエネルギーの一部はサンゴにも取り込まれ、炭酸カルシウムの骨格を形成する。この骨格に藻が生息しているのだ。
つまりこういうことだ。サンゴは、藻が光合成によって作ったエネルギーを取り込んで骨格を形成するため、藻が生息する場所 (骨格) を提供しているのだ。また、藻は色素を持っているため、藻が存在することでサンゴ礁は色彩豊かになる。
このようにサンゴと藻は共生関係にあるんだけど、海水温度が大きく上昇したりしてサンゴにストレスがかかった場合にどうなるかというと、サンゴは藻を吐き出してしまい、だんだんと色が白くなっていくが、この段階ではサンゴはまだ死んでいないという。しかし、このまま藻を取り戻すことができなければ、病気にかかりやすくなって、最後には死滅してしまうそうだ。

研究チームは、インド洋に浮かぶ多くの島々からなるセーシェル共和国で、白化現象が大量発生した1998年前後17年分のデータを詳細に調査したところ、21ヶ所のサンゴ礁のうち12ヶ所は白化現象から回復し、残り9ヶ所は死滅した。この違いを分析した結果、今回の5つの要因を見出したという。

今後、地球温暖化やその他の脅威に直面するサンゴ礁を保護するために、この研究結果が活かされるのかな。

関連記事はこちら。
AFPBB News:http://www.afpbb.com/articles/-/3036617?pid=15080306

Date: 2015/01/10
Title: 日本付近に「カルマン渦」出現
Category: 気象
Keyword: カルマン渦


ネットのニュースをチェックしていたら、次のニュースが目にとまった。
「冬型続き 渦状の雲 カルマン渦が出現」


済州島と屋久島の南東側に
できた二つのカルマン渦
日本気象協会 tenki.jp より
このところ日本付近では冬型の気圧配置が続き、日本列島には北西の季節風が吹きつけていて、“例によって” 筋状の雲が広がっている。このような状況の下、昨日の気象衛星画像には、済州島と屋久島の南東側 (つまり風下側) に「カルマン渦」がきれいにできているのが写っている。まさに目を奪われてしまうほどの見事な渦だ。

カルマン渦 (Karman's vortex) というのは、流体中に円柱のような障害物を置いて、その障害物を動かしたときに、その後ろ側に交互にできる渦の列のことだ (逆に、障害物が止まっていて、その障害物に向かって流体が流れていくとき、下流側に渦ができる) 。

身近な例でいうと、季節風の強い冬場に電線が「ヒュー、ヒュー」と鳴っていることがあるけど、これも、電線に空気が当たって電線から空気が剥離し、風下側に「カルマン渦」ができているからだ。このときの渦放出の振動数に応じて音波が伝わってきて、人間の耳には「ヒュー、ヒュー」と聞こえるのだ。


カルマン渦ができる様子の模式図
また、昔アメリカで発生したタコマナローズ橋という吊り橋の崩壊事故も、強風によって発生したカルマン渦が原因だといわれている。渦が発生するような不安定な空気の剥離が起こって橋が上下に振動し、渦と橋の振動が共振して崩壊に至ったとされている。

さらに気象現象のような大きなスケールでもカルマン渦は発生する。孤立した山岳や島がある領域の大気に気温逆転層があり、逆転層の上に山の頂上が突き出ていて、風向きがほぼ一定で比較的強い風が吹いているなどの条件がそろっているとカルマン渦による渦雲が発生する。これが冬場の済州島や屋久島の風下側で見られるカルマン渦による渦雲なのだ。

関連サイトはこちら。
日本気象協会の tenk.jo の記事:
http://www.tenki.jp/forecaster/diary/t_yoshida/2015/01/09/19761.html