♬ 音楽CD&DVD ♪

■CD編 - 2019年 

最近買った音楽CDやDVDについてのページです。ブログやPCに保存してある日記に書いていたもを集めて、一部加筆・修正して一覧にしてあります。このページで紹介しているCDは2019年に買ったCDです。

 

Date: 2019/12/28
Artist: SANOVA
Title: Cloud9


sanova4.jpg 猪突猛進型!?女性ピアニスト・堀江沙知率いるピアノ・インスト・プロジェクト「SANOVA」の1stアルバム。彼らの2nd〜4thアルバムは持っているんだが、1stアルバムは持っていないので、今回はこのCDを買うことにしたのだ。

彼らのバンド構成はピアノ、ベース、ドラムのピアノトリオだが、和製ネオ・ジャズと称されているように、いわゆる通常のピアノトリオとは一味違う新世代のトリオだ。全曲をピアニストの堀江沙知が作曲を手掛けていて、アップテンポのまさに”猪突猛進”という感じの楽曲が持ち味だが、その一方で5曲目の「tuki no hikari」と10曲目の「手紙」(この曲はピアノソロだ)はメロウな楽曲で、どことなく”和”を感じさせる聴いていて心が和む作品だ。アップテンポの曲を連続で聴いて少し疲れてきたところで、これら2曲が癒してくれる。そんな構成になっている作品だ。

思えば、今年の初めにタワレコでSANOVAの3rdアルバムを見つけて買ったことに始まり、次いで2ndと4thアルバムを買い、今回の1stアルバムと、SANOVAに始まり、SANOVAに終わった1年だった。

来年はどんな作品を世に送り出してくれるのか、それが楽しみだ。

Date: 2019/12/28
Artist: 向谷実
Title: The Games -East Meets West 2018-


mukaiya.jpg 元カシオペアのキーボード奏者・向谷実のプロジェクトによる2018年に発売されたアルバム。新宿のタワレコでたまたま見つけ、試聴してみたら結構良かったので買うことにしたのだ。

このアルバムは、向谷実とドン・グルーシンの構想に始まり、日米のトップミュージシャンたちとのコラボによって実現したものだ。参加ミュージシャンは実に多彩で、向谷実(keyboards, piano)のほかに、アメリカからはドン・グルーシン(Don Grusin: keyboards, piano)、アーニー・ワッツ(Ernie Watts: tenor/soprano sax, flute)、ハーヴィー・メイソン(Harvey Mason: drums)、エイブラハム・ラボリエル(Abraham Laboriel Sr.: bass)、ポール・ジャクソン Jr.(Paul Jackson Jr.: guitar, cavaquinho)、エリック・ミヤシロ(Eric Miyashiro: trumpet, flugelhorn)だ。対する日本勢は、本田雅人(alto sax)、中川英二郎(trombone)、二井田ひとみ(trumpet, flugelhorn)が参加している。

収録されている曲も、カシオペア時代の曲から、ドン・グルーシン、アーニー・ワッツ、ハーヴィー・メイソンなど参加ミュージシャンが手掛けた曲が新たなアレンジで収録され、最後には向谷とドンの共作による新曲「The Games」 - これは東京オリンピックをイメージして作られた楽曲だそうだ - が収録されている。これはフュージョン・ファンにとってはたまらないアルバムだし、向谷実のミュージシャンとしてだけでなく、作曲家、アレンジャー、プロデューサーとしての実力を遺憾なく発揮したアルバムだと思う。

ところで、ポール・ジャクソン Jr.が弾いている楽器で”cavaquinho”(カヴァキーニョ)という聞いたことのない楽器があったので、ネットで調べてみたら、これはサンバなどのブラジル音楽で使用される4弦の弦楽器で、ギターの仲間の楽器だそうだ(ポルトガルからもたらされた楽器が起源のようだ)。

Date: 2019/12/28
Artist: Spyro Gyra
Title: Carnaval


spyro_gyra6.jpg アメリカのフュージョンバンド、スパイロ・ジャイラ(Spyro Gyra)の1980年にリリースされた4作目のアルバム(2017年リマスター盤)。例によって新宿のタワレコでCDを選んでいるとき、昔の作品でまだ持っていないものも買おうと思って、今回はこの作品を買うことにしたのだ。

スパイロ・ジャイラといえば、サックス奏者のジェイ・ベッケンスタインとキーボード奏者のジェレミー・ウォールによって1977年に結成されて以来、2020年の現在も活動を続けているとっても息の長い(実に40年以上だ!)バンドだ。このアルバムは彼らの通算4作目のアルバムで、当時のメンバーは、ジェイ・ベッケンスタイン(Jay Beckenstein; saxophone)、トム・シューマン(Tom Schuman; keyboards)、ジェレミー・ウォール(Jeremy Wall; keyboards)、デイヴ・サミュエルズ(David Samuels; vibraphone/marimba)、チェット・カタロ(Chet Catallo; guitar)、ジム・カーツドーファー(Jim Kurzdorfer; bass)、イーライ・コニコフ(Eli Konikoff; drums)、ジェラルド・ヴェレス(Gerardo Velez; percussion)で、他にゲストとして、ランディ・ブレッカー(Randy Brecker; trumpet)とマイケル・ブレッカー(Michael Brecker; flute、他にホーン・セクションとしてtenor saxで参加)のブレッカー兄弟、ウィル・リー(Will Lee; bass)、ジョン・トロペイ(John Tropea; guitar)など多くのミュージシャンがレコーディングに参加している。

今回の作品では、彼らの特徴であるメロディアスな楽曲とトロピカルなサウンドに、サンバなどのブラジル音楽のテイストが加わり、より華やかな内容に仕上がっていると思う。その辺りのことはアルバムタイトル「Carnaval(ポルトガル語、英語では”Carnival”)」とジャケットのイラストにも現れている。発売から40年が経過している作品だが、全く色褪せていないサウンドはさすがだ。

Date: 2019/9/21
Artist: ユッコ・ミラー
Title: Kind of Pink


yucco1.jpg サックス奏者ユッコ・ミラー(Yucco Miller)の3rdアルバム。新宿のタワレコでたまたま見つけ、試聴してみたら結構よかったので買うことにしたのだ(初回限定盤CD+DVDを買った)。

彼女はここ何回か町田のジャズフェスティバルに出演しているので、名前は知っていたし、演奏も聴いていたので(サックスの腕前はなかなかのものだった)、気にはなっていたのだ。というわけで、今回初めて彼女のアルバムを買うことにしたのだ。町田のジャズフェスティバルに出演しているときの印象はキャピキャピギャルという感じだったが、今回のアルバムジャケットの写真は随分と大人びた感じになっていて、以前との落差が大きい(個人的見解です)。

今回のアルバムは本格的ジャズ・アルバムということで、グラミー賞を受賞した世界的ジャズ・アレンジャー(ピアニストでもある)デイヴィッド・マシューズ(David Matthews)が数曲をアレンジ、3曲目の「’Round Midnight」ではピアノも弾いている。レコーディング・メンバーは、彼女(alto/soprano sax)の他に、サイモン・コスグローブ(Simon Cosgrove: piano)、パット・グリン(Pat Glynn: bass)、ジーン・ジャクソン(Gene Jackson: drums)、デニス・フレーゼ(Dennis Frehse: drums)だ。さらにゲスト・ミュージシャンとして、デイヴィッド・マシューズの他に、ルイス・バジェ(Louis Valle: trumpet)、川崎哲郎(tenor sax)が参加している(う~ん、彼女以外知らない人たちばかりだ…)。

収録されている曲は、彼女自身によるオリジナル曲やジャズのスタンダードから、「名探偵コナン」のメイン・テーマ曲、それから「宝島」(これは吹奏楽のアレンジがよく知られているようだが、原曲はT-Squareの曲だ。作曲は元メンバーでキーボード奏者の和泉宏隆で、The Square時代の1986年にリリースされたアルバム『S・P・O・R・T・S』に収録されている)やジブリ映画の曲(「魔女の宅急便」の『海の見える街』、「ハウルの動く城」の『人生のメリーゴーランド』)と多彩だ。本格的ジャズとは言っても、全体的に聴きやすく、なかなかイケてるアルバムだと思し、彼女のサックス奏者としての実力を認識させられた。

DVDの方は、アルバム1曲目の「Blue Stilton」のミュージックビデオ、レコーディングの様子やインタビュー、それからアルバム未収録のジャズのスタンダード・ナンバーの「Softly as in a Morning Sunrise」のスタジオセッションが収録されている。

Date: 2019/9/21
Artist: 上原ひろみ
Title: Spectrum


hiromi25.jpg 上原ひろみの待望の新作アルバム。9月18日に発売されたので、新宿のタワレコに行って早速買ってきたのだ(初回限定盤、ボーナスCD付きを買った)。

今回の作品は10年ぶりのソロ・ピアノ・アルバムだ。アルバムタイトル『Spectrum』から想像されるように、今回のアルバムのコンセプトは「色」で、収録されている曲の曲名も「色」に因んだものだ(チャップリンに捧げられた『MR. C.C.』を除いて)。全体を通して聴いていくと、白と黒の88個の鍵盤の上で音楽を紡いでいく彼女の10本の指によって、一つの色が現れては消え、また新たな色が現れ、そして無限の色彩が創り出されていく。そんなことを想像してしまう。ソロ・ピアノ・アルバムというのはピアニストの力量が問われるものだと思うが(個人的見解ですけど…)、これは「上原ひろみ」というピアニストが次元を超えた存在だということを、あらためて認識させられる作品だ。

前回のソロ・ピアノ・アルバム『Place To Be』の後は、アンソニー・ジャクソン(Anthony Jackson: contrabass guitar)とサイモン・フィリップス(Simon Phillips: drums)との最強トリオ”The Trio Project”で駆け抜け、さらには矢野顕子、エドマール・カスタネード(Edmar Castaneda、コロンビア出身のジャズ・ハープ奏者)とのコラボ活動などを行ってきたが、40歳となった今年、このソロ・ピアノ・アルバムの発表後、どんなプロジェクトで活動していくのか、そしてどこまで進化していくのか、今から楽しみだし、それを見守っていきたいと思う(10年前にも同じようなことを書いた気がする…)。

ボーナスCDは2010年8月に行われたブルーノート・ニューヨークで行われたライブを収録したもので、このライブもソロ・ピアノでのライブだ。ジャズの本場ニューヨークで、しかもソロ・ピアノだけで会場を沸かせる彼女の力量には圧倒されてしまう。これは一聴の価値ありだ(日本語には「一見の価値あり」という言い方はあるが、「一聴の価値あり」という言い方があるかまでは知らないけど…)。

今回の新作を携えて、今年は待望の日本ツアー「JAPAN TOUR 2019 “SPECTRUM”」が開催され、僕は12月の東京公演のチケットをすでに確保しているので、どんなライブになるのか今から楽しみだ。

Date: 2019/9/7
Artist: SANOVA
Title: ZIPANG


sanova3.jpg 「猪突猛進型!?女性ピアニスト」堀江沙知率いる和製ネオジャズ・プロジェクトSANOVAの4thアルバム。新作が出たというのは知っていたので、タワレコで早速買ってきたのだ。

アルバムタイトル『ZIPANG』から連想されるように、今回のアルバムのテーマは「日本」だ。これは令和の時代になって最初のアルバムなので、そういうことも意識しているのかな?

オープニングのアルバムタイトル曲「ZIPANG」では、いきなり雅楽で使われる笙(かな?たぶん)と笛や琴の音に続き、琵琶の音が聞こえてくる。まさに「和」そのものだ。そのあとは、いかにも彼女らしいサウンドで、まさに”猪突猛進型”の楽曲から、しっとりと聴かせる楽曲まで、日本をイメージしたどこか郷愁を感じさせるメロディで表現した彼女の音楽の世界が広がっている。それぞれの曲のタイトルも、例えば「日出ル処」「不忍の忍者」「華」のように、かなり”日本”を意識したものになっている。まさに令和の時代の始まりに彼女が送り出した渾身の作品だと思う。

Date: 2019/7/1
Artist: SANOVA
Title: Elevation


sanova2.jpg 女性ピアニスト・堀江沙知のピアノ・インスト・プロジェクト”SANOVA”の2017年12月に発売された2ndアルバム。正月に3rdアルバムを買って以来お気に入りのバンドだが、今回は2ndアルバムを買うことにしたのだ(今回はいつもの新宿のタワレコの店舗ではなく、オンラインストアでクーポンを使って買ったのだ)。

オープニングから彼女らしい”猪突猛進型”のピアノが炸裂し、SANOVAミュージックの世界を繰り広げている。さらに7曲目の『natsuno Utage』ではトランペットとサックスもフィーチャーされ、さながら”quasimode”のようなクラブジャズの雰囲気を漂わせている。また、10曲目の『regards』ではヴァイオリンがフィーチャーされ、ピアノトリオとは一味違った趣の曲になっている。最後の曲の『未来への道』では、落ち着いた美しいピアノソロを聴かせてくれている。

公式サイトによると、9月には4thアルバムが発売されるようだ。こりゃ楽しみだ。

Date: 2019/6/28
Artist: Spyro Gyra
Title: Catching The Sun


spyro_gyra5.jpg アメリカのフュージョンバンド、スパイロ・ジャイラ(Spyro Gyra)の1980年にリリースされたアルバム。例によって新宿のタワレコでCDを選んでいるとき、たまたま手にとって、このアルバムは確か持っていなかったなと思い(自信はなかったけど、ウチに帰って確認したら、やっぱり持っていなかった)、買うことにしたのだ。

スパイロ・ジャイラといえば、サックス奏者のジェイ・ベッケンスタインを中心に結成され、1978年に自らのバンド名を冠したファースト・アルバムでデビューし、今も活動を続けている長寿バンドだ。1979年に発表した2作目の『Morning Dance』が大ヒットして一躍トップバンドの仲間入りを果たしたが、このアルバムはそんな彼らの3作目のアルバムだ。
長い活動期間でメンバーが入れ替わっている彼らだが、この当時のメンバーは、ジェイ・ベッケンスタイン(Jay Beckenstein: sax)とともにバンドを立ち上げたジェレミー・ウォール(Jeremy Wall: key)の他に、トム・シューマン(Tom Schumann: key)、デイヴ・サミュエルズ(Dave Samuels: vib, marimba)、チェット・カタロ(Chet Catallo: g)、イーライ・コニコフ(Eli Konikoff: ds)、ジム・カーツドーファー(Jim Kurzdorfer: b)、ジェラルド・ヴェレス(Gerardo Velez: perc)だ。彼らの他にもゲスト・ミュージシャンとしてウィル・リー(Will Lee: b)、ジョン・トロペイ(John Tropea: g)、ランディ・ブレッカー(Randy Brecker: tp)などもレコーディングに参加している。

スパイロ・ジャイラの魅力といえば、ジャズ、R&B、ファンクやカリビアン音楽のエッセンスを取り入れたサウンドと軽快な楽曲を、確かなテクニックでプレイを聴かせてくれるところだと思う。特に、ジェイ・ベッケンスタインのサックスとデイヴ・サミュエルズのヴィブラフォンとマリンバのサウンドが印象に残るバンドだ(残念ながら、デイヴ・サミュエルズはバンドを抜けてしまったが(※))。 このアルバムも初期の彼らのパフォーマンスを堪能できるアルバムの一つだと思う。

※これを書くにあたってネットでいろいろ検索していたら、デイヴ・サミュエルズは今年の4月22日に長い闘病の末に70歳で亡くなったという記事を見つけた。残念。ご冥福をお祈りいたします。
アメリカのジャズ・マガジン『Jazz Times』の記事:
https://jazztimes.com/features/tributes-and-obituaries/dave-samuels-1948-2019/

Date: 2019/6/28
Artist: 山中千尋
Title: Prima Del Tramonto


chihiro16.jpg ジャズピアニスト、山中千尋の新作アルバム。新作が出たというのは知っていたので、仕事帰りに新宿のタワレコによって買ってきたのだ(初回限定盤のCD+DVDを買った)。

今回の作品は、ブルーノート設立80周年を記念して、ソニー・クラーク(Sonny Clark、1931-1963、アメリカのジャズピアニスト)によるブルーノートの名曲のカバーや、先天性疾患による障害を克服してフランス最高のジャズ・ピアニストと評されるミシェル・ペトルチアーニ(Michel Petrucciani、1962-1999)ゆかりのナンバー、ウディ・ショウ(Woody Shaw、1944-1989、アメリカのトランペット奏者)の作品に加え、彼女の最新オリジナルナンバーなど多彩な構成になっている。

今回のピアノトリオのメンバーは、彼女(piano, Fender Rhodes, Hammond B-3)と、レギュラートリオのメンバーでもある脇義典(Yoshi Waki: bass)、ジョン・デイヴィス(John Davis: drums)の他に、ヴィセンテ・アーチャー(Vicente Archer: bass)、ダミオン・リード(Damion Reid: drums)という2組のリズムセクションがレコーディングに参加している。
内容的には、何とも軽快なピアノから、美しい響きのピアノ、それからエレクトリック・ピアノ(Fender Rhodes)のサウンドと、彼女の渾身のピアノプレイとそれをサポートする2組のリズムセクションのミュージシャン達のプレイを堪能できる作品だと思う。

特典DVDの方は、「Cherokee」「Cùcciolo(クッチョロ:アルバムには未収録)」「Sweet Love Of Mine」のレコーディングの模様(スタジオライブ?)が収録されている。Cùccioloというなんとも不思議な名前(意味は分かりません)の曲は、何だか前衛ジャズのような雰囲気の曲だ。

※ところで、クレジットでは彼女はピアノの他にFender Rhodesも弾いていることになっているが、DVDで「Sweet Love Of Mine」の映像を見ると、彼女が弾いているのは僕が知っているFender Rhodesではないようだが。あれは新型?それとも、他のシンセサイザーでFender Rhodesのような音を出しているのかな?(映像では機種までは分からなかった)

Date: 2019/5/3
Artist: 米澤美玖
Title: Exotic Gravity


miku.jpg テナーサックス奏者、米澤美玖のアルバム。新宿のタワレコでたまたま見つけ、試聴してみたら結構良かったので買うことにしたのだ。

僕は彼女のことを全然知らなかったんだが、ネットで調べてみると、8歳でテナーサックスを始め、11歳でビッグバンドでジャズに出会う。2014年頃から様々な音楽イベントに出演。2017年にはJazzの専門誌「Jazz Japan Vol.80」にて「2010年代に頭角を現した新鋭アーティスト60」に選定され紹介され、これまでに5枚のアルバムをリリースし、多くのミュージシャンと共演を重ねてきた、今大注目のサックス奏者のようだ。

今回のアルバムはキングレコードから発売された彼女のメジャー・デビュー作品で、彼女自身によるオリジナル楽曲を中心に構成された作品だ(他に「The Flight Of The Bumble Bee/熊蜂の飛行」や「リベルタンゴ」も収録されている)。アルバム全体を通して、彼女が相当の実力の持ち主であることがわかる作品で(サックス奏者としてだけでなく、作曲家としても)、特に「The Flight Of The Bumble Bee」では超絶技巧のサックスを聴かせてくれている。これはなかなかいいアルバムだと思うし、この1枚を聴いただけで、彼女のファンになってしまった。

ここ10年くらい、日本では女性サックス奏者が目白押しで(その多くがアルトサックス奏者で彼女のようなテナーサックス奏者は珍しいが ― 個人的感想です)、その誰もがかなりの実力の持ち主で、層の厚さを実感させられる。

ところで、6曲めの「Biosphere」はクレジットではテナーサックスとなっているが、何回聴いてもソプラノサックスの音に聴こえる。本当にテナーサックスで演っているのか?
まぁ、テナーサックスとソプラノサックスの音域は半分近くは重なっているので(ネットで調べた限りでは)、テナーでもソプラノのような音は出せるのかもしれないけど(僕はギターは弾くけど、サックスは吹いたことがないので、その辺のことはよくわからないが)。

Date: 2019/5/3
Artist: 寺久保エレナ
Title: Absolutely Live!


erena5.jpg サックス奏者、寺久保エレナのライブアルバム。新宿のタワレコでたまたま見つけ(ライブアルバムが出たとは知らなかった)、思わず買ってしまった(一応試聴したが)。

今回のアルバムは、自身初のライブアルバムで、2019年1月14日に新宿ピットインで開催されたライブを収録したものだ。このライブは、彼女の前作『Little Girl Power』で共演して以来のレギュラー・バンド”寺久保エレナ・カルテット”によるもので、メンバーは彼女(alto/soprano saxophone)の他に、片倉真由子(piano)、金森もとい(bass)、高橋信之介(drums)だ。このメンバーでツアーを重ねて、成熟したバンドによるグルーヴ感溢れるプレイは圧巻だ。これを聴いていると、このライブい行きたかったなぁ、と思ってしまう、まさにそんな感じのライブアルバムだ。

去年書いたブログに、「サックス奏者としてだけでなく、バンドリーダーとしてもさらに進化を遂げたようだ。この先もさらに進化を遂げていくのだろう。楽しみだ」と書いていたが、まさにそんな感じで進化を遂げた彼女の姿がそこにあった。この先、彼女はどのように進化していくのか、その姿を見届けて行きたい。

Date: 2019/5/3
Artist: Mammal Hands
Title: Becoming


mammal4.jpg UKジャズシーンで、その先鋭的なサウンドで注目されているジャズトリオ、”哺乳類の手”ママル・ハンズ(Mammal Hands)の新作アルバム。新宿のタワレコでたまたま見つけ、思わず買ってしまった(いちおう試聴はしたが)。

ママル・ハンズは、2014年にたまたま彼らのデビューアルバムを買って以来注目してきたが、今回のアルバムは、マンチェスターのレーベル " Gondwana Records " の10周年記念イベント『Gondwana10』で作られたものに、ボーナストラック2曲(ヨーロッパ・ツアーでのライブ)を追加して、日本限定CD化、タワレコ限定で発売されたものだそうだ。

今回のアルバムはボーナストラックを入れても5曲のみのミニアルバムだが、彼ら3人によって紡ぎだされる美しく、繊細なアンサンブルを十分堪能できるものだと思う。

Date: 2019/3/9
Artist: Lee Ritenour
Title: Friendship 2(リー・リトナー&フレンドシップ - アンサンブル)


ジャズ/フュージョン界のスーパーギタリストとして長年君臨しているリー・リトナーの昔のアルバム。昔のアルバムで持っていないものを買おうと思って、今回はこのアルバムを買うことにしたのだ。

この作品は1979年(平成どころか昭和の時代だ!)に発表されたもので、CDの解説を読むと、このアルバムはリー・リトナーとその”友人たち”によって結成されたユニット「フレンドシップ」によって発表された『アンサンブル』として日本では発売されているようだ(リー・リトナーの公式サイトではアルバムタイトルは「Friendship 2」となっているが…)。

このユニットのメンバーは、リー・リトナーの他に、ドン・グルーシン(Don Grusin: keyboards)、アーニー・ワッツ(Ernie Watts: saxophone)、エイブラハム・ラボリエル(Abraham Laboriel: bass)、アレックス・アクーニャ(Alex Acuna: drums, timbales)、スティーブ・フォアマン(Steve Forman: percussion)と、当時のウェスト・コーストの売れっ子ミュージシャンが勢ぞろいだ。

1980年前後のフュージョンサウンド満載のこのアルバムは、フージョン界の第1級のミュージシャンとなった彼らの若い頃の、グルーヴ感に溢れたエネルギッシュなプレイを堪能できる1枚だと思う。発売から40年経っているんだなと思いながら聴いていたら、40年前の情景を思い出してしまった。

Date: 2019/3/9
Artist: Chuck Loeb
Title: Silver Lining ~ The Best Of Chuck Loeb


2017年7月31日、61歳で惜しくもこの世を去ったアメリカのスムースジャズ・ギタリスト/プロデューサー、チャック・ローブのベストアルバム。新宿のタワレコでたまたま見つけ、これは買っておかなければと思い、買ったのだ。

チャック・ローブは僕の好きなギタリストの一人で、彼のアルバムを初めて買ったのは2001年に発売された「In a Heartbeat」だった。それ以来彼のファンになったのだ。彼はソロ活動の他、ステップス・アヘッドのメンバーとして活動し、そして2010年からはスーパーバンド・フォープレイの3代目ギタリストとして、多くの名演を残してきた。このアルバムは彼を追悼した日本企画のベストアルバムで(プロデュースは彼の妻でシンガー・ソングライターのカルメン・クエスタによる)、彼の名演が詰め込まれている。

僕はこれまで彼のライブに行く機会がなかったが(松居慶子のライブにゲスト出演している映像をDVDで見たことはあるが)、彼の逝去によってその機会は永遠に失われてしまった。もう彼の生演奏を聴くことができない。これだけが残念でならない。

Date: 2019/3/9
Artist: 松居慶子
Title: Echo


世界的スムースジャズ・ピアニスト、松居慶子の新作アルバム。彼女の公式Webサイトで新作が出たのを知り、買おうと思っていたのだ(初回スリーブ仕様、日本限定スペシャルジャケット、16Pブックレット付を買った)。

このアルバムは、全米デビューから32年、全米リリース28枚目となる作品で、全米ビルボードのコンテンポラリージャズ・チャートで初登場1位となったアルバムだ(2001年発売の『Deep Blue』以来3度目の全米1位で、日本人初の快挙だ)。

今回の作品も全曲書き下ろしで、参加しているミュージシャンも、マーカス・ミラー(Marcus Miller: Bass、3曲目の "Echo" )、カーク・ウェイラム(Kirk Whalum: Tenor Saxophone、4曲目の "Esprit" )、ロベン・フォード(Robben Ford: Guitar、5曲目の "Marlin Club Blues" )、カイル・イーストウッド(Kyle Eastwood: Acoustic Bass、10曲目の "Return To Eternity" 、名前から分かるように、彼はクリント・イーストウッドの息子だ)と多彩だ。

また、5曲目の "Marlin Club Blues" ではハモンドオルガン(Hammond B-3)もフィーチャーされている(演奏しているのは Randy Waldman)。彼女の曲でハモンドオルガンが使われているのは初めて聴いたような気がする(少なくとも、僕の記憶の限りでは)。この曲は曲名にあるようにブルース調でなかなかご機嫌なナンバーだ。さらに今回の作品では、サックス以外に、トランペットやトロンボーンといったホーン・セクションが多用されていて(10曲中7曲)、これまでとは違う世界を垣間見せてくれている。

全体を通して聴いて、今回の作品は、なんとも小気味好いナンバーから、「これぞ松居慶子」という感じの美しいメロディのナンバーまで、作曲家として、またピアニストとしての彼女の音楽の世界が詰め込まれている作品だと思う。

Date: 2019/1/2
Artist: SANOVA
Title: BLISS


SANOVAというバンドの3rdアルバム。「猪突猛進型!? 女性ピアニスト」というキャッチフレーズが目にとまり、試聴してみたら結構良かったので、今年最初に買うCDは今年の干支「亥」にちなんで、このCDを買うことにしたのだ。

僕はこのバンドのことを全然知らなかったので、ネットで調べてみた。発売元のビクターエンタテインメントのWebサイトによると、Sanovaというのは「彗星の如く現れた、猪突猛進?!女性ピアニスト堀江沙知のピアノ・インスト・プトジェクト」だそうだ。バンドの編成はピアノ/キーボードとベースとドラムのピアノトリオだが(うち1曲だけストリングスもフィーチャーされている)、和製ネオ・ジャズといわれている彼女の創り出す音楽は、全体的に聴きやすいフレーズで、軽快で爽快感あふれるピアノサウンドが持ち味のようだ。まさに突進してくような感じのするピアノプレイは、猪突猛進型といわれる所以なのだろう。

これまでピアノトリノの作品は色々と聴いてきたが、これはどれとも異なるタイプだと思うし、なかなかイケてるアルバムだ。こりゃ、過去の作品も聴かなくちゃいけないな。